世の中で起きている、またはこれから起きるかもしれない現象を、何とか定式化してその現象の本質を探ろうとするが科学である. ここ2, 3百年の間に、多くの現象が定式化され、その式を解くことによって、いろいろなことが分かってきた.
また、ここ数十年コンピュータのハード並びにソフトの発達により、ほとんどの定式化された物理現象は、行列の固有値問題として扱うことができるようになった. このことから、大学で学ぶべきことは現象の定式化をいかに行うかということと、その式をいかに解くかということになる.
まず、定式化を行うには、物体の時間による変化や位置による変化と、基本となる法則が必要となる. 基本となる法則とは、例えば、ニュートンの第2法則、別名、運動方程式などである. 次に、その現象を再現するような実験が必要だったり、規模が大きくて再現ができないようなものは、コンピュータでのシミュレーションを行ったりしなければならない. そして、実験やシミュレーションで得たデータをもとに、定式化に磨きをかける.
さて、こうやってできた式は、多くの変数を含んでいる. これらの変数を1つのベクトルとして扱うことにより、生まれたのが線形代数学である. つまり、線形代数学を学ぶことは、これから学ぶいろいろな専門科目の基礎を作ることになる.
最後に本書が線形代数学への入門書としての役割を果たし, 各専門分野での勉学の架け橋となることを願います.
2005年3月 著者