ここではドイツの数学者 G.F.B. Riemann (1826-1917) によって示されたRiemann積分について学んでいきます.
は閉区間 で定義されているとします.この区間 を次のような点
で 個の小区間に分割します.
図 3.3:
定積分
|
この分割を で表わし,
のうちで最も大きい値を で表わします.いま,それぞれの小区間
のなかに任意の点 をとり,Riemann和(Riemann sum) とよばれる次の和を考えます.
このとき,
となる実数 が存在するならば,この を の 定積分(definite integral) といい, は で積分可能(integrable) であるといいます.また,この を次のように表わします.
つまり関数 が で積分可能であるということは,分割の仕方および点
のとり方に関係なく一通りに定まるということです.これより,区分求積法とよばれ,次のようにして積分を求める方法があります.
とすると,
では,どんな関数が で積分可能になるのでしょうか.次の定理はそんな疑問に答えてくれます.
定理 3..7
が で連続ならば, で積分可能である.
今後,特に断らない限りこの章にでてくる などの関数は,考えている区間で連続であるとします.
定積分の定義より,ただちに次の公式が得られます.
定理 3..8
は区間 で連続であるとすると,
証明
(1) の場合. の任意の分割を
とし, を
内の任意の点としてRiemann和を考えると,
ここで,
とすると,定理3.7より,
(3)
(2),(4),(5)の証明は各自に任せます.
微分積分学の基本定理
関数 が で連続であるとき, 内の任意の点 に対して定積分
を考えると,これは を定義域にもつ関数になります.この関数について,次の定理が成り立ちます.
定理 3..9
が で連続であれば,
は について微分可能であって,
となる.
証明
とおくと,
は の導関数を求めることになるので,
を考えます.まず, のとき,
ここで を における の最大値, を における の最小値とすると(なぜ最大値,最小値が存在するとわかる?), で
したがって,定理3.7より
となる.そこで,両辺を でわると,
仮定より, は で連続なので,
よって,はさみうちの定理より
同様に のとき
となり, は微分可能であり,
となる.
この定理より,
は の原始関数となります.よって,連続な関数は必ず原始関数をもっていることがわかり,その原始関数は定積分で与えられます.
例題 3..21
が連続のとき
を求めてみましょう.
解
まず, とおくと
.よって
定理 3..10
[微分積分学の基本定理]
閉区間 で連続な関数 の つの原始関数を とすると
である.
証明
定理3.7より,
も の原始関数です.よって,定理3.1より
定数.
ここで だから,
.よって, .
このとき
となるから, とすると,
ここで,
は
または
と略記されます.
この定理より,定積分の計算は被積分関数の不定積分を求め,積分範囲の端点を代入しその差を求めればよいことがわかります.
例題 3..22
次の定積分の値を求めてみましょう.
解
確認問題
- 1.
- 区分求積法を用いて,
を求めよう.
- 2.
- 次の定積分を計算しよう.
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
- 3.
-
,
,
のとき,次の問いに答えよう.
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
- 4.
- 関数 が連続であるとき, を求めよう.
(a)
(b)
(c)
- 5.
- 次の極限値を求めよう.
(a)
(b)
(c)
演習問題
- 1.
- 関数 が連続であるとき, を求めよう.
(a)
(b)
(c)
- 2.
- 次の定積分を計算しよう.
(a)
(b)
(c)
(d)
(e)
- 3.
- 定理3.7(2),(3),(4),(5)を証明しよう.
- 4.
- 次の不等式を証明しよう.
(a)
(b)
- 5.
- 次の極限値を求めよう.
(a)
(b)
(c)