自然数 のおのおのの数に対してそれぞれ実数
解 まず, とおくと となるので は正しい答です.では, はどうでしょう. となるので も正しい答です.
この答えを見て不思議だと思った人は,これまでに学んだ数列を思い出してみましょう.多分,等差数列と等比数列については学んだと思います.学んだことの無い人のために,それぞれの数列の定義を与えます.
つまり,等差数列や等比数列は隣り合う数列の差や比が一定の場合です.しかし,例題のように隣合う数列の差や比が一定でない数列の場合は,数列の差どうしの差を考える必要があります.これを階差といいます.次の数列を見てみましょう.
これより,数列の一般項は であると考えることができます.しかし,例題の数列の場合,階差を考えると,
数列 において,すべての について である定数 が存在するとき,数列 は 上に有界(bounded above) であるといい,すべての について である定数 が存在するとき,数列 は 下に有界(bounded below) であるといいます.またすべての について のとき,数列 は 有界(bounded) であるといいます.
解 について
すべての について となるとき,数列 は 単調増加数列(monotonically increasing sequence) であるといいます.同様に,すべての について となるとき,数列 は 単調減少数列(monotonically decreasing sequence) であるといいます.
解 まず,どうやって と の大小の比較をしたらよいか考えてください.大きさの比較には,基本的に2つの方法があります.1つは差が正か負かを調べます.もう1つの方法は比が 1より大きいか小さいかを調べます.
ここでは比を使って調べてみましょう.まず, であることに注意して,
さて数列 において,項の番号が限りなく大きくなるとき, がある定数 に限りなく近づくことを
ここで関数の極限値の考え方を用いると数列の極限値は次のように定義できます.
解 数列 は任意の正の数 に対して とおくと, のとき
数列 が収束しないとき,数列 は 発散する(diverge) といいます.関数の極限値と同じように次の定理は数列の極限値を求めるとき基本です.
が成り立つ.
証明 定理1.3参照
解 まず, のとき, ,また となります.したがって,
が成り立つ.
解 まず, のとき, ,また となります.したがって,
では,分子と分母が共に無限大に発散するときは,どうなるのでしょうか.このときの形を不定形(indeterminate)といい,このときは,分子と分母からの最高次数の項をくくり出すことによって,定理1.5,1.5を用いることができる形に変形します.
解 まず, のとき, ,また となります.そこで分子と分母から最高次数の項をくくりだすと
実際に極限値を求めるには上の定理1.5だけでは不十分です.例えば の極限値は定理1.5からは求められません.そんなとき,次の定理は便利です.
証明
より
解 まず, よりすべての に対して
数列の収束,発散の基本となるものに の極限がどうなるのか知っておく必要があります.なんとなく分かる人もいると思いますが,はっきりと理解したい人には,スイスの数学者 Jakob Bernoulli によって証明された Bernoulliの不等式(Bernoulli's inequality) と呼ばれる不等式は助けになるでしょう.
証明
のとき で
のとき で
したがって,
解 まず, より ならば となります.
のとき とおくと ,ここで
のとき となるので .
のときには を考えます. ならば, となるので とおくとBernoulliの定理より
最後に のとき とおくとBernoulliの定理より