母集団分布の形が分かっているがその母数が未知であるときに,個の標本値
を母集団分布に従う確率変数
がとることは最も起こりやすい(maximum likelihood)という条件を用いてその母数を決めようとするものである.
例題 3..4
ポワソン母集団から大きさ3の独立な標本を無作為に抽出したとき,その値が
であったとする.この標本値から母平均を推定しよう.
解 標本値
は,母集団と同じポワソン分布に従い,かつ互いに独立な確率変数
たとった値だと考えられる.そのような値をとる確率
をとすると,
は独立より,
となる.ここで,この確率が最も起こりやすいを求める.つまり,が最大となるようなを求める.
は標本値として既知であるから,の関数としての
は,
のときに最大となる.したがって,
より,
が母平均の推定値である.
このようにして得られた推定量を最尤推定量といい,推定値を得るために考えた関数を尤度関数といいます.
例題 3..5
に従う正規母集団から,大きさの独立な標本を無作為抽出したところ,その標本値が
であった.母分散が既知のときの母平均の最尤推定量を求めよ.
解
の確率密度は
である.個の標本は互いに独立なので
ここで,
は既知だから,
したがって,
が最尤推定量となる.
1. 次のデータの不偏分散を求めよう.また,標準偏差を求めよう.