方程式
から, の関数としての つまり
を考えることができます.一般に2変数関数 に対して,1変数関数 が常に
を満たすとき, を方程式
から定まる陰関数(implicit function) といいます.
から定まる陰関数 を求めることは,
を について解くことと同じです.しかし の形によっては,ある の値に対して,
を満たす の値は1つもないことがあります.そこでどんな場合に陰関数が存在するかが問題になります.これについて,次の定理があります.
定理 6..9
[陰関数の存在定理]
を含む領域 で は 級とする.
ならば, の近傍で
の定める陰関数 がただ1つ定まり,次の関係が成り立つ.
つまり,
となる点の近くでは(1)を満足する陰関数 が存在し.さらに に関して微分可能であることが証明されています.だから(1)の両辺の全微分をとると
したがって条件
により
と形式的に(3)を導き出すことができます.さらに上の式を について微分すると
ここで
を用いると
となります.
例題 6..22
次の式から定まる陰関数について,
を求めてみましょう.
解
とおき, の全微分を求めると,
したがって,
また
なので,
となります.
2変数関数のときと同じように3変数関数 において,
から定まる の陰関数
について考えることができます.
例題 6..23
から定まる の陰関数
について
を求めてみましょう.
解
の全微分をとると
なお
より
よって
ここで と は独立変数であることに注意すると,
となります.
次に2つの式
から が の陰関数として定まる場合について考えてみましょう.
例題 6..24
から, が の関数として定まるとき
を求めてみましょう.
解
とおき,全微分をとると,
これより を消去すると
したがって,
同様にして, を消去すると
したがって,
となります.
*陰関数の極値
から定まる陰関数 の極値を考えてみましょう.まず で極値
をとるとすると,陰関数の存在定理より
また, が極値をとるためには
でなければならないので
よって
.次に
が極小値か極大値か調べるために,
を求めると
これより,
ならば で極小値
,
ならば で極大値
.ここまでをまとめると次の定理を得ます.
定理 6..10
ある領域で は 級とする.
より定まる陰関数 が で極値
をとるならば,
さらに
例題 6..25
から定まる の関数 の極値を求めてみましょう.
解
まず,
を満たす を求めます.
より
.次に
より
を計算すると
したがって, のときの は極小値, のときの は極大値, のときの も極大値です.
確認問題
- 1.
- 次の式から定まる陰関数について,
を求めよう.
(a)
(b)
(c)
(d)
- 2.
- 次の式から定まる陰関数について,
を求めよう.
(a)
(b)
演習問題
- 1.
- 次の式から定まる陰関数について,
を求めよう.
(a)
(b)
(c)
(d)
- 2.
- 次の式から定まる陰関数について,
を求めよう.
(a)
(b)
- 3.
- 楕円
上の点
における接線と法線を求めよう.
- 4.
- 曲面
上の点
における接平面と法線を求めよう.
- 5.
- 次の式から定まる陰関数 の極値を求めよう.
(a)
(b)
(c)