1変数の極値については3章で学びました.ここでは2変数の極値について考えてみます.
の
近傍内のすべての点
に対して
が成り立つとき,関数
は点
で極小になるといい,
を
の 極小値(local minimum) という.
が成り立つとき,関数
は点
で極大になるといい,
を
の 極大値(local maximum) という.また,極小値と極大値を一括して極値(extrema) という.
1変数のとき関数
が
で極値をとれば
が存在し,かつ
,または
は存在しないのどちらかでした.2変数でも同じようなことがいえるか考えてみましょう.
が
で極値をとれば,次のどちらかが成り立つ.
存在しない
証明
だけの関数
は
で極値をとるから,
または
は存在しない. 同様に
または
は存在しない.
解
が
で極値をとるとすれば
したがって
したがって
について解くと
は点
で極値をとる可能性があることが分かりました.しかし,これが極小値なのか極大値なのかさらに調べてみなければなりません.
そこで,2変数の関数の極値の判定には次の定理があります.
で
は
級とする.領域
内の点
で
であるとき,
ならば
ならば
ならば
この定理を証明するのに2変数関数のTaylorの定理を用います.
が点
の近傍で
級ならば,この近傍内にある
に対して,
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||
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Taylorの定理で
のとき,マクローリンの定理といいます.
証明
とおくと,
は
の
級関数であるから,1変数関数のTaylorの定理より
とおくと
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はすでに成り立つので,
まで成り立つと仮定すると
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||
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||
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やっと2変数の極値に関する定理の証明ができます.
証明
Taylorの定理より,
に対して
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||
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とおくと,
より
とおくと,
の符号は
の符号によってきまる.ここで
のときは,
が
級の関数であるから
が十分に小さく,しかも同時に0とならないならば,どのような
をとっても
となるので
は極小値となる.
のときは,
が
級の関数であるから
が十分に小さく,しかも同時に0とならないならば,どのような
をとっても
は極大値となる.
次に
の場合を考える.もし
ならば
とできるが,
とおくと,
のとき,
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だから,
は
により正にも負にもなる.
この定理を使って先ほどの問題を解いてみます,
解
は極小値になります.
を点
において2次の項までテイラー展開しよう.
解
より,定理6.7において,
,
とおくと,
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