という条件のもとで, の極値を求める問題を考えてみましょう.
より
ならば
を満たす陰関数 が定まります.いま
が
で極値をとるとすると,
かつ より,
また
を で微分すると
よって
ここで
とおくと
を満たす が存在することが分かります.これより次の定理を得ます.
定理 6..11
[Lagrangeの乗数法]
条件
のもとで, が極値をとる の値は,
とおいて,
の解として得られる.
この定理は幾何学的に考えると次のように考えることができます.
よりベクトル
は曲線
と直交します.また が条件
のもとで極値をとるということは,
の等高線
と
が共有点を持つときの の値の極値のことです.したがって, が
で極値をとるならば,この点において,
と
は接することになります.よって
と
は平行となり,
を満たす が存在するのです.
すでに外積(ベクトル積)を学んだ人は,
と
は平行より次の式を得ることができます.
例題 6..26
のとき,
の極値を求めてみましょう.
解
より,
とおくと
より |
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(6.2) |
より |
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(6.3) |
より |
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(6.4) |
は式6.2を満たしません.そこで式6.3,6.4が
という解を持つ条件は,
つまり,
. すなわち
となります.
のとき,式6.2,6.3より
.
これらに対して,
の値は となります.
のとき,式6.2,6.3より
.これらに対して,
の値は となります.
一方,
は有界閉集合であり,この上で
は連続なので,最大・最小値の定理より最大値,最小値をもちます.これらは極値でもあるので,上で求めた結果より,極値であれば,それは4か20のはずです.よって,最大値は20,最小値は4となります.
例題 6..27
点 から曲面
までの最短距離を求めてみましょう.
解
点 と与えられた平面上の点 との距離を とし, の最小値を求めます.
より
とおくと
より |
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(6.5) |
より |
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(6.6) |
より |
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|
(6.7) |
より |
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(6.8) |
式6.6,6.7,6.8より
これらを式6.5 に代入すると
これより
これを について解くと
したがって
を得ます.これは曲面上の点の座標です.ところで の値は,いくらでも大きい値をとることができるので,ここでの極値は極小値で,しかも唯一の極値ということから最小値となります.
確認問題
- 1.
- 次の条件
のもとでの の最大値,最小値を求めよう.
(a)
(b)
(c)
- 2.
- 楕円
と原点との最短距離を求めよ.
演習問題
- 1.
- 次の式から定まる陰関数 の極値を求めよう.
(a)
(b)
(c)
- 2.
- 次の条件
のもとでの の最大値,最小値を求めよう.
(a)
(b)
(c)
- 3.
- 点
が直線
上を移動するとき, の最大値を求めよう.
- 4.
- 点
が球面
上を移動するとき,
の最大値,最小値を求めよう.