各項が関数であるような級数を 関数項級数(series of functions) といいます.
を区間 で定義された関数の列とします.この関数列
より
を考えます.区間 のすべての点 で数列
が収束するとき,つまり
であるような関数 が存在するとき,級数
は収束するといい, を無限級数の和とよびます.特に収束が区間 において一様収束である場合,つまり, の任意の に対して
ならば
となる が の に無関係に存在する場合,級数
は で一様収束する(uniformly convergent) といいます.
ここで
とおくと,無限級数の一様収束は次のように表わせます.
の任意の に対して
ならば
となる が存在する.
次に,ドイツの数学者 Carl Weierstrass (1815-1897) によって示された一様収束するための簡単な十分条件を学びます.
定理 4..9
[Weierstrassの判定法]
ある区間 の任意の に対して
であるような数列 が存在するとき,
は で一様収束かつ絶対収束である.
証明
ところで
より,どんな
に対しても が存在し, ならば
ここで は明らかに とは無関係なので, のとき
が成り立ちます.
例題 4..7
は一様収束するか調べてみましょう.
解
. また
なので,Weierstrassの判定法により一様収束します.
ここでなぜ一様収束という考え方が生まれたのか考えてみましょう.例えば
となる級数
を考えます.関数列
は区間
で連続です.すると定理1.4より
も区間
で連続となります.そこでその極限値
も連続だろうと考えたくなります.しかし,実際はどうでしょう.
より
のときには,発散してしまいます.つまり,たとえすべての項が連続でもその和は連続とは限らないのです.これでは不便なので,なんとか有限のときに成り立つ性質を,無限のときにも適用できるように,考え出されたのが一様収束という概念なのです.よって無限級数が一様収束するとき,級数は有限級数のもっている多くの性質を継承します.
定理 4..10
[無限級数の連続性]
が区間 で連続で
が で一様収束ならば,
も で連続である.
証明
区間Iの任意の点 に対して,
がいえればよいでしょう.まず,一様収束の仮定に着目し,
と変形して,
とすると,一様収束の仮定から,任意の正の数
に対し, ならば
となる正の数 が存在します.
次に の連続性から,
に対し を適当にとることができ,
ならば
したがって,
ならば
定理 4..11
[項別積分の定理]
が区間 で連続で
が で一様収束ならば,
証明 区間 内の任意の点 に対して,
ここで が に一様収束するので,任意の正の数
に対し, に無関係に をとり, ならば,
とすることができるはずです.したがって, の任意の について, ならば,
これより
定理 4..12
[項別微分の定理]
が区間 で 級で,
かつ
が一様収束するならば
証明
が一様収束するので,その極限関数を とおくと,前の2つの定理より, は連続で,
ここで,
に注意すると,
となるので,
は連続なので,
は微分可能でかつ
よって も微分可能で,
となり,これより
無限級数
において,特に
のときを 整級数(power series) といいます.例えば
のTaylor級数
は整級数の1つです.ここで,
は
を意味し一般化された2項係数といいます.
さて
は のどんな値に対して収束するのでしょうか.
とおき, D'Alembert の判定法を用いると
より
ならば
は収束し,
ならば
は発散するのでこの極限値
を 収束半径(radius of convergence) といいます.これをまとめると次の定理を得ます.
定理 4..13
は
のとき絶対収束し,
のとき発散する.
例題 4..8
を用いて次の整級数の収束半径を求めてみましょう.
解
次に整級数の基本性質をあげておきます.
定理 4..14
[整級数の基本性質]
の収束半径を とし,
とおくと,次の から が成り立つ.
任意の
に対し,
は で絶対収束かつ一様収束する.
は
で連続である.
は
で項別積分可能であって,次の式が成り立つ.
は
で項別微分可能であって,次の式が成り立つ.
において の Taylor級数は整級数
である.つまり
証明
(1)
を満たす をとると,定理4.4より
は絶対収束します.そこで
となる を適当にとることができる.したがって,
ならば,
よってWeierstrassの判定法により
は で絶対収束かつ一様収束します.
(2)
とおくと,無限級数の連続性により, は
で連続となる.
(3)
とおくと,項別積分の定理により,
が成り立つ.
(4)
の収束半径を求めると
したがって,
は で一様収束するので,項別微分の定理より
が成り立つ.
(5) のTaylor級数を求めると
例題 4..9
の整級数を求めてみましょう.
解
Taylor展開すれば整級数は求まりますが,もっと簡単に求めることができます.
まず,
は
の不定積分であることを思い出します.つまり,
次に,
を級数展開すると
これより
ここで項別積分の定理を使うと
よって
となります.ついでに のときどうなるか考えてみましょう. のとき,右辺はLeibnizの定理の条件を満たす交項級数となるので収束します.よって
となります.
確認問題
- 1.
- 項別微分,項別積分を用いて次の関数のMacLaurin級数を求めよ.
(a)
(b)
演習問題
- 1.
-
次のベキ級数の収束半径を求めよう.
(a)
(b)
(c)
- 2.
-
次の関数の のまわりのベキ級数展開を求めよう.
(a)
(b)