$ \chi ^{2}$分布

$ \chi ^{2}$分布は1つの自然数$ n$を含む連続型分布で, $ \chi^{2}(n)$と表し$ n$をその自由度という。$ \chi ^{2}$分布の密度関数$ f_{n}(x)$は次の式で与えられる。

$\displaystyle f_{n}(x) = \left\{\begin{array}{ll}
\frac{1}{2^{\frac{n}{2}}\Gamm...
...)}x^{\frac{n}{2}-1}e^{-\frac{1}{2}x} & x > 0\\
0 & x \leq 0
\end{array}\right.$

ここで,ガンマ関数$ \Gamma(x)$

$\displaystyle \Gamma(x) = \int_{0}^{\infty}t^{x-1}e^{-t}dt (x > 0)$

で定義される。

$ \chi ^{2}$分布の名前は次の性質から来ている。

定理 3..4  

確率変数 $ X_{1},X_{2},\ldots,X_{n}$が同一の標準正規分布$ N(0,1)$に従い,互いに独立ならば,その統計量

$\displaystyle \chi_{n}^{2} = X_{1}^{2} + X_{2}^{2} + \cdots + X_{n}^{2}$

は自由度$ n$$ \chi ^{2}$分布に従う。その期待値と分散は

$\displaystyle E(\chi_{n}^{2}) = n, V(\chi_{n}^{2}) = 2n$


定理 3..5  

[$ \chi ^{2}$分布の加法性] $ \chi_{n}^{2}, \chi_{m}^{2}$がそれぞれ自由度$ n$,$ m$$ \chi ^{2}$分布に従い,互いに独立ならば, $ \chi^{2} = \chi_{n}^{2} + \chi_{m}^{2}$は自由度$ n+m$$ \chi ^{2}$分布に従う。

標本分散$ S^{2}$に関して,次の定理がある。

定理 3..6  

$ N(\mu, \sigma^{2})$の正規分布に従う母集団から無作為で得た標本を $ \{X_{1},X_{2},\ldots,X_{n}\}$とすると,

$\displaystyle Y = \frac{1}{\sigma^{2}}\sum_{i=1}^{n}(X_{i} - \bar{X})^{2} = \frac{nS^2}{\sigma^2}$

は自由度が$ n-1$$ \chi ^{2}$分布に従って分布する。

例題 3..9  

母集団が正規分布であるとする.$ n$が20の標本から標本分散を求めたところ,その値は1.5であった。母分散が1のとき,標本分散が1.5より大きい確率を求めよ.

$ P(S^{2} \geq 1.5)$を求める。 $ X_{i} \sim N(\mu,1)$より,

$\displaystyle Y = \frac{20S^2}{1} = \sum_{i=1}^{20}(X_{i} - \bar{X})^{2}$

は自由度19の$ \chi ^{2}$分布に従う。したがって,
$\displaystyle P(S^{2} \geq 1.5)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle P(20S^{2} \geq 28.5)$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle P(\chi_{19}^{2} \geq 28.5)$  

ここで,$ \chi ^{2}$分布表を用いると, $ P(\chi_{19}^{2} > 27.20) = 0.10$ $ P(\chi_{19}^{2} > 30.14) = 0.05$より,

$\displaystyle P(\chi_{19}^{2} \geq 28.5) = 0.05 + \frac{28.5-27.20}{30.14 - 27.20}(0.10 - 0.05) \approx 0.07$