不等式

微積分では不等式を解くことが要求されます.そこで,ここでは,不等式の解き方について学びます.不等式を解く方法は,方程式を解く方法とよく似ています.不等号の向きは,両辺に同じものを加えたり,両辺から同じものを引いたり,両辺に同じ正の数をかけたりしても変わりません.しかし,両辺に負の数をかけると不等号の向きは反転します.つまり, $x - 2 < 5$の両辺に2を加えると, $x - 2 + 2 < 5 + 2$となり,これより$x < 7$となります.また,$2x < 10$の両辺に $\frac{1}{2}$をかけると $\frac{1}{2}(2x) < \frac{1}{2}(10)$となり,これより$x < 5$となります.しかし,$-2x < 10$の両辺に $-\frac{1}{2}$をかけると不等号の向きが逆になり, $-\frac{1}{2}(-2x) > -\frac{1}{2}(10)$となります.これを整理すると,$x > -5$を得ます.ここで,求めた不等式を数直線上に記してみましょう.例えば,$x > -5$$-5$より大きな全ての実数を表しています.そこで,$x > -5$と書く代わりに,区間を用いて $(-5, \infty)$と書くことができます.

区間$[a,b]$を集合を用いて表すと

$\displaystyle [a,b] = \{x \in {\mathcal R} : a \leq x \leq b\}$

区間$(a,b)$を集合を用いて表すと

$\displaystyle (a,b) = \{x \in {\mathcal R} : a < x < b\}$

区間 $(-\infty,b]$を集合を用いて表すと

$\displaystyle (-\infty,b] = \{x \in {\mathcal R} : -\infty < x \leq b\}$

区間 $(a,\infty)$を集合を用いて表すと

$\displaystyle (a,\infty) = \{x \in {\mathcal R} : a < x < \infty\}$

となります.

例題 0..6  

次の不等式を解いてみましょう.

$\displaystyle \frac{1}{2}(1 + x) \leq 6$

この不等式を解くには,$x$の周りにあるものを除いてやればよいでしょう.まず,両辺を2倍することにより $\frac{1}{2}$を除きます.

$\displaystyle 1 + x \leq 12$

次に,1を両辺から引くと,

$\displaystyle x \leq 11$

したがって,不等式の解は $(-\infty, 11]$となります. $\ \blacksquare$

例題 0..7  

次の不等式を解いてみましょう.

$\displaystyle \frac{1}{5}(x^{2} - 4x + 3) < 0$

まず,両辺を5倍することにより $\frac{1}{5}$を除きます.

$\displaystyle x^{2} - 4x + 3 < 0$

この2次式を因数分解すると,

$\displaystyle (x-1)(x-3) < 0$

$(x-1)(x-3)$が0になるのは,1と3です.そこで,これらの点を数直線上に白抜きまるで印を付けておきます. これにより,数直線は次の3つの区間に分割されます.

$\displaystyle (-\infty, 1),\ (1,3), \ (3, \infty)$

これらの区間内では,積 $(x-1)(x-3)$の符号(sgn)は変わりません.

$(-\infty, 1)$ ${\rm sgn}[(x-1)(x-3)] = (-)(-) = +$
$(1,3)$ ${\rm sgn}[(x-1)(x-3)] = (+)(-) = -$
$(3, \infty)$ ${\rm sgn}[(x-1)(x-3)] = (+)(+) = +$

これより,不等式の解は$(1,3)$となります. $\ \blacksquare$

例題 0..8  

次の不等式を解いてみましょう.

$\displaystyle \frac{x+2}{1 - x} \geq 1$

まず,両辺に-1を加えて右辺の1を削除します.

$\displaystyle \frac{x+2}{1 - x} - 1 \geq 0$

整理すると
$\displaystyle \frac{x+2 - (1 - x)}{1 - x}$ $\displaystyle \geq$ 0  
$\displaystyle \frac{2x + 1}{1-x} \geq 0$      

ここで,分母を払うのですが$1-x$をかけて払うと,$1-x$の符号を気にする必要があります.そこで,$(1-x)^{2}$を両辺にかけて分母を払うと

$\displaystyle (2x+1)(1-x) \geq 0$

となります. 積 $(2x+1)(1-x)$が0になるのは, $-\frac{1}{2}$と1です.そこで,これらの点を数直線上に白抜きまるで印を付けておきます. 次に,等号は分子が0のときだけ満たされるので, $-\frac{1}{2}$の点を黒く塗ります.これにより,数直線は次の3つの区間に分割されます.

$\displaystyle (-\infty, -\frac{1}{2}],\ [-\frac{1}{2},1), \ (1, \infty)$

$(-\infty, -\frac{1}{2}]$ ${\rm sgn}[(2x+1)(1-x)] = (-)(+) = -$
$[-\frac{1}{2},1)$ ${\rm sgn}[(2x+1)(1-x)] = (+)(+) = +$
$(1, \infty)$ ${\rm sgn}[(2x+1)(1-x)] = (+)(-) = -$

これより,不等式の解は $[-\frac{1}{2},1)$となります. $\ \blacksquare$