累乗

同じ数を2回以上かけあわせたものを,その数の累乗(power)またはべきといいます.例えば,$ a$を3回かけあわせたとすると,「$ a$の3乗」といい,$ a^{3}$と表します.このとき,$ a$底(base)テイといい,かけた回数を添え字として右肩に小さく書き指数(exponent)といいます.

例題 0..4  

次の値を求めてみましょう.

(1) $ 2^{2},\hskip 0.5cm (2) 2^{3},\hskip0.5cm (3) (-2)^{2},\hskip 0.5cm (4) (-2)^{3}$

$ 2^{2} = 2 \cdot 2 = 4, 2^{3} = 2 \cdot 2 \cdot 2 = 8, (-2)^{2} = (-2)(-2) = 4,  (-2)^{3} = (-2)(-2)(-2) = -8$ $  \blacksquare$

累乗どうしの掛け算はそれほど難しくはありません.例えば,$ a^{3}$$ a^{4}$をかけると,$ a$を3回と4回の合計7回かけることになるので,

$\displaystyle a^{3} \cdot a^{4} = a^{3+4} = a^{7}$

一般に,$ a > 0$$ m,n$が整数のとき,

$\displaystyle a^{m} \cdot a^{n} = a^{m+n}$

が成り立ちます. さて,累乗どうしの割り算はどうでしょうか.例えば,$ a^{5}$$ a^{2}$で割ってみましょう.

$\displaystyle \frac{a^{5}}{a^{2}} = \frac{aaaaa}{aa} = aaa = a^{3} = a^{5-2}$

となります.次に,$ a^{2}$$ a^{5}$で割ってみましょう.

$\displaystyle \frac{a^{2}}{a^{5}} = \frac{aa}{aaaaa} = \frac{1}{aaa} = \frac{1}{a^{3}} $

となります.ちょっと不便ですね.そこで,

$\displaystyle a^{-1} = \frac{1}{a}$

と定め,これを負の指数(negative exponent)といいます.これを用いれば,

$\displaystyle \frac{a^{2}}{a^{5}} = \frac{aa}{aaaaa} = \frac{1}{aaa} = \frac{1}{a^{3}} = a^{-3}$

と表せます.一般に,$ m,n$が整数のとき,

$\displaystyle a^{m} \div a^{n} = a^{m-n}$

が成り立ちます.

例題 0..5  

次の値を求めてみましょう.

(1) $ \displaystyle{a^{3} \times a^{4}}$ (2) $ \displaystyle{a^{3} \div a^{4}}$ (3) $ \displaystyle{(a^{3})^{4}}$ (4) $ \displaystyle{\left(\frac{a}{b}\right)^{3}}$


(1) $ a^{3} \times a^{4} = a^{3+4} = a^{7}$ (2) $ a^{3} \div a^{4} = a^{3-4} = a^{-1}$ (3) $ (a^{3})^{4} = a^{3 \times 4} = a^{12}$
(4) $ \left(\frac{a}{b}\right)^{3} = \frac{a^{3}}{b^{3}}$ $  \blacksquare$

$ x^{n} = a$を満たす$ x$$ a$$ n$乗根ということを以前説明しました.これを記号で表そうとすると,$ n$が偶数か奇数かと$ a$が正,零,負によって異なるので,簡単ではありません.そこで,一般に, $ a^{\frac{n}{m}}$と表すときには,$ a > 0$であるという条件をつけます.さて, $ a^{\frac{n}{m}}$とはなんでしょうか. $ a^{\frac{1}{m}}$ $ \sqrt[m]{a}$のことです.したがって,

$\displaystyle a^{\frac{n}{m}} = \sqrt[m]{a^{n}} = (\sqrt[m]{a})^{n}$

となります.このようにして,指数を整数から有理数へと拡張することができます.これより,$ a, b > 0$, $ r_{1}, r_{2} \in {\mathcal Q}$のとき,次の指数公式が成り立ちます.

  1. $ a^{r_{1}} \times a^{r_{2}} = a^{r_{1} + r_{2}}$
  2. $ a^{r_{1}} \div a^{r_{2}} = a^{r_{1} - r_{2}}$
  3. $ (a^{r_{1}})^{r_{2}} = a^{r_{1}r_{2}}$
  4. $ (ab)^{r_{1}} = a^{r_{1}}b^{r_{1}}$
  5. $ \left(\frac{a}{b}\right)^{r_{1}} = \frac{a^{r_{1}}}{b^{r_{1}}}$

これをさらに有理数から実数へと拡張しようとするためには,極限値の話が必要となります.

確認問題


1.
次の数は有理数か無理数か答えよう.

(a) $ \displaystyle{\frac{4}{7}}$ (b) $ \displaystyle{\frac{\pi}{4}}$

2.
次の数の絶対値を求めよう.

(a) $ \displaystyle{-3.0}$ (b) $ \displaystyle{\pi}$

3.
$ a = 2$, $ b= -3$, $ c = -5$のとき,次の値を求めよう.

(a) $ \displaystyle{\vert a + b + c\vert}$ (b) $ \displaystyle{\vert a - b + c\vert}$

4.
次の値を求めよう.

(a) $ \displaystyle{9^{\frac{3}{2}}}$ (b) $ \displaystyle{27^{-\frac{1}{3}}}$

5.
$ a > 0$, $ n$を整数とするとき,次の式を簡単にしよう.

(a) $ \displaystyle{\sqrt[4]{a^{5}}}$ (b) $ \displaystyle{\sqrt{a^{-2}\sqrt[3]{a}}}$ (c) $ \displaystyle{\sqrt{a}\times\sqrt[3]{a^{-2}}\div a^{\frac{1}{6}}}$

6.
次の式を簡単にしよう.

(a) $ \displaystyle{\sqrt{18} + \sqrt{50} - \sqrt{72}}$ (b) $ \displaystyle{(\sqrt{5} - \sqrt{2})^{2}}$ (c) $ \displaystyle{(4\sqrt{2} + \sqrt{3})(\sqrt{2} + 3\sqrt{3})}$

7.
次の分母または分子を有理化しよう.

(a) $ \displaystyle{\frac{2}{\sqrt{5} - \sqrt{3}}}$ (b) $ \displaystyle{\frac{\sqrt{3}}{\sqrt{n+1} - \sqrt{n-2}}}$ (c) $ \displaystyle{\sqrt{n+2} - \sqrt{n-1}}$