数学では,新しいオブジェクト(数,多項式,行列など)が登場すると必ずそれらの四則演算を考えます.幼稚園か小学校の低学年のころを思い出してください.数が数えられるようになったら,次に何をしましたか.例えば,2と5を加えたりしたでしょう.そのあと,2から5を引こうとして困ったことがありませんでしたか.困って当然です.なぜなら2 - 5は自然数ではないからです.そこで,これらの計算ができるように自然数に負の符号を付けたものと0を加えて
(1) (2)
解
(1) | |
(2) |
直角三角形で のとき,となります.つまり,は2の平方根となります.2乗したら2になる数を記号()を用いて,またはと表します.ここで,とは,2乗したら2になる数のうち正の数と定義されます.一般に,となるをの乗根(nth root)といいます.
(1) 4の平方根 (2) 8の3乗根 (3) -8の3乗根
解
(1) | より,4の平方根はとである. |
(2) | より,3乗して8になるのは2だけである.したがって,8の |
3乗根は2である. | |
(3) | 2.の説明により,の3乗根はである. |
さて,は有理数でしょうか.もし,が有理数ならば, と表せるはずです.ここで,とが公約数を含んでいるなら,その公約数でとを割り,とには公約数がない状態にしておきます.このようなとを互いに素(relatively prime)であるといいます. の両辺を2乗し分母を払うと,
となります.左辺は2の倍数ですから偶数です.ということは,右辺も偶数なので,は2の倍数となります.2乗して偶数になるには,もともとが偶数でないと無理です.なぜなら,奇数と奇数をかけると奇数になってしまうからです.したがって,は偶数です.そこで, と表し,式(1)に代入すると,
では,はどんな数なのでしょうか.を少数で表すと,数字が繰り返されることなく終わりなく続きます.ここで,やっと小学生が抱く疑問の一つの答えが出ました.少数が終わりなく続く数が実際に存在することが分かったのです.そこで,このような数を無理数(irrational numbers)とよびます.無理数には,の他にも などがあります.実際,無理数と有理数を一つずつ対応させると,有理数が足りなくなってしまうほど無理数は沢山あります.
有理数と無理数をあわせて実数(real numbers)といいます.実数は,図1に示す数直線(number line)上の点で表すことができます.つまり,実数全体の集まりが数直線に対応しているということです.この実数全体の集まりを記号 ,有理数全体の集まりを記号 ,整数全体の集まりを記号 を用いて表し,が実数であるということを, と表します.整数は英語のIntegersのIを用いずに,ドイツ語のZahlenのZを用いるのが慣わしになっています.
集合の話が出たついでに微分積分学で用いる他の記号についても見ておきましょう.
オブジェクトは集合の要素である | |
オブジェクトは集合の要素ではない | |
集合は集合の部分集合である | |
集合と集合の和集合 | |
集合と集合の積集合 | |
と集合の直積 | |
空集合 | |
性質を持つ要素の集合 | |
命題と命題は同値である |
ある数を文字を用いて表すと,数の絶対値は次のように表されます.
(1) (2) (3) (4) (5) (6)
解
1. 2. |
3. |
4. |
5. 6. |
絶対値を含む演算では,一般に次の関係が成り立ちます.