1章で極限値について学びましたが,
のとき
だとすると,
と書くことにすると,同じように極限値が明白でない場合が,和,差,積,商,累乗などのときにも起こります.例えば,
つの関数
は閉区間
で連続,開区間
で微分可能とする.
で,しかも
と
が同時に 0 にならないならば,
が少なくとも
つ存在する.
平均値の定理を
に適用すると,
と
の値は一般に等しくないので,この方法ではCauchyの平均値の定理は得
られません.
証明 平均値の定理のときと同じように,Rolleの定理の条件を満たすような関数を考えます.
となり,
はRolleの定理の条件を満たす.したがって,Rolleの定理より,
が少なくとも1つ存在する.ところで,
ならば
となり仮定に反する.したがって,
となり,
極限値を求めるのに苦労した人もいると思いますが,次の定理はそんな人の味方です.この定理はフランスの数学者 G. F. A. L'Hospital (1661-1704) の名前をとってつけられました.最初に証明したのは彼の先生の Jakob Bernoulli (1654-1705)です.
つの関数
は閉区間
で連続,開区間
で微分可能とする.
で,しかも
証明
である
をとると,Cauchyの平均値の定理より,
が少なくとも1つ存在する.したがって,
この定理は
の場合も成り立ちます.
次の極限値を求めてみましょう.
解
これは
の形の不定形です.そこで,分母,分子を別々に微分し,その商の極限値を求めると,
の形の不定形です.そこでもう一度,分母,分子を別々に微分し,その商の極限値を求めると,
の形の不定形です.そこでもう一度,分母,分子を別々に微分し,その商の極限値を求めると,
さてL'Hospitalの定理は
の不定形のときにしか使えないのでその他の不定形のときは,次のようにして
の形に変形します.
(1)
の場合,
を求めてみましょう.
解
これは
の不定形をしています.そこで
を
と書き直すと
の不定形になり,L'Hospitalの定理より
より極限値は存在しません.
不注意で
にL'Hospitalの定理を用いると
と書きたくなりますが,これは間違いです.
(2)
の場合,
を求めてみましょう.
解
これは
の不定形をしています.そこで
を
と書き直すと
の不定形になり,L'Hospitalの定理より
(3)
または
の場合,
または
を求めてみましょう.
解
これは
の不定形をしています.そこで
を
と書き直すと
は
の不定形なので
を
と書き直すと,
の不定形になり,L'Hospital の定理より
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