超越関数 を多項式を用いて表わすことができないでしょうか.もしそうなれば ,整関数さえ知っていれば他の関数のことを知らなくてすむのです.そんな疑問に イギリスの数学者 Brook Taylor (1685-1731) は1712年に答えてくれました.
定理 2..16
[Taylorの定理]
が点 を含むある区間で 級であるならば,
となるような が存在する.
証明
定数 を
を満たすようにとり,
とおくと,
となり, はRolleの定理の条件を満たす.したがって,Rolleの定理より
よって
ここで用いられた を Lagrangeの剰余数(Lagrange's remainder) といい,
を Taylorの多項式(Taylor's polynomial) といいます.特に とおいて得られる定理を Maclaurinの定理 といい, とおくと
となります.
ここで誤差の評価は
で与えられます.
例題 2..34
Maclaurinの定理を使って
の Taylorの多項式とLagrangeの剰余数の誤差の評価を求めてみましょう.
解
より
よって
ここで
が成り立ちます.ところが,
よって
は を含む区間 で
級関数とすると,Maclaurinの定理より任意の自然数 に対して,
が成り立ちます.このとき,もし
であるならば
と表わせます.この式を の Maclaurin展開(Maclaurin expansion),または での Taylor展開(Taylor expansion) といいます.
定理 2..17
次の級数展開が成り立つ.
ただし,
証明
(1)はすでに例題で行いました.
(2)
とすると
より
と表わせる.よって
となる.これより を計算すると
よって
(3),(4),(5)の証明は演習問題にまわしますのでやってみましょう.
ここでE.G.H.Landau(1877-1938)によって用いられたちょっと便利な記号を紹介します.例えば関数 の間に
が成り立つとき
と表わし,このOをLandauのビッグオー (Landau O)といいます.またのとき,つまり
が成り立つとき
と表わし,このoをLandauのスモールオー (Landau o)といいます.ここでMacLaurinの定理をもう一度みてみましょう.関数が無限回微分可能だとし,次の多項式を作ってみます.すると,剰余項は
で与えられ,が
級より
は連続となります.よって
となります.ここでLandauの記号を用いると
となるので,次の定理が成り立ちます.
定理 2..18
関数が0を含むある区間で
級ならば
が成り立つ.
例題 2..35
Landauの記号を用いて次の極限値を求めてみましょう.
解
のMacLaurin展開より
と表わせます.
よって
確認問題
- 1.
- 次の関数のMacLaurin展開を定理2.17を用いて求めよう.
(a)
(b)
(c)
(d)
演習問題
- 1.
- 次のMacLaurin展開が成り立つことを示そう.
(a)
(b)
(c)
ただし,
(d)
,
- 2.
- 次の極限値をLandauの記号を用いて求めてみよう.
(a)
(b)
(c)
(d)
- 3.
-
(a) 演習問題1(d)より,
を得ることができる.これを用いて,プログラムを組みを小数点以下2桁まで求めてみよう.
(b)
と表した式をMachinの公式という.この公式を用いてを小数点以下100桁まで求めてみよう.