実数
の部分集合
に属する各点
に対して,実関数
が与えられるとき,1つのベクトル
を考えることができます.このベクトル
を
から
への1変数ベクトル値関数(vector-valued function)または ベクトル関数(vector function) といい,
しばしば
は幾何学的に実軸
から原点と点
を結ぶベクトルへの写像として扱われます.
のとき,
の軌跡を求めてみましょう.
解
の成分は
であるから,
となり,
の軌跡
は放物面
上にあることが分かります.
において,
のとき,
ならば,
の極限値は
であるといい,次のように表わす.
極限値の定義は1変数関数のときと同じなので,たぶん連続性の定義も1変数関数のときと同じになると期待するでしょう.実際そのとうりです.
が成り立つとき,ベクトル関数
は
で連続であるという.また,区間
のすべての
で連続なとき,
は区間
で連続であるといい,
と表わす.
このように1変数関数における様々な定義はベクトル関数へと継承されます.
は
において,
で微分可能(differentiable)
であるという.また,この極限値
を点
における微分係数といい,
で表わす.
次の節で学びますがベクトル
の方向は,
によって描かれる曲線の
での接線方向になります.図5.1参照
ベクトルの和やスカラー倍がそれぞれの対応する成分の和やスカラー倍で定義されたように,ベクトル関数の極限値,微分係数,不定積分の計算は,ベクトル関数の成分の極限値,微分係数,不定積分より求めることができます.
とすると,次のことが成り立つ.
証明
(a)
![]() |
![]() |
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|
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![]() |
||
![]() |
![]() |
ならば,
.また,
ならば,
より,
(b),(c),(d)の証明は演習問題にまわします.
のとき,
を求めてみましょう.
解 それぞれの成分を微分することにより
が
について微分可能なベクトル関数ならば,次のことが成り立ちます.
![]() |
![]() |
||
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![]() |
||
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![]() |
||
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の大きさ
が定数のとき,
と
は全ての
において直交することを示してみましょう.
解
より,
.
よってベクトル関数の微分法より
と
は直交します.
(a)
のとき,
を求めよう.
(b)
のとき,
を求めよう.
(c)
が
について微分可能なベクトル関数のとき,
(d)
が
について微分可能なベクトル関数のとき,