深さ m の井戸にカエルが落ちました.カエルは必死に井戸からでようとしています.一回目のジャンプで1mとびあがり,二回目のジャンプで
m, 三回目のジャンプで
m と次々に前回の半分の距離をジャンプしていきました.ここで質問です.このカエルはやがて外にでれたでしょうか.考えてみましょう.まず,
とおくと, 質問は
はどうなるかと聞いているのと同じです.そこで,
が数列のとき,この数列を用いて新たに数列
を作ります.このとき第項までの部分和 を 第部分和(nth partial sum) といいます.
数列
は形式的に
で表わされ,これを 級数(series) といいます.数列 が収束するとき,つまり
であるような実数 が存在するとき,級数
は に収束する(convergent) といい,
と表わし,級数
の和は であるといいます.また,数列 が収束しないとき,級数
は 発散する(divergent) といいます.
例題 4..1
を求めてみましょう.
解
より
よって
これより
つまり
は収束し,その和は です.
これを一般化したものに次の定理があります.次の級数は簡単に収束,発散の判定ができるのでよく用いられます.
定理 4..1
[無限等比級数] のとき,
証明
のとき,
より発散.よって について考えます.
より
よって
例題 4..2
を求めてみましょう.
解
まず
を部分分数で書き直してみると,
となります.これより第n部分和 を求めると
これより,
この級数の第部分和は途中がすべて消えてしまうので,telescoping sum(望遠鏡級数)ともよばれています.
ここで収束する級数すべてにおいて成り立つ定理を示します.
定理 4..2
[発散条件]
が収束するならば,
証明
よって
この定理の対偶をとると数列 が収束しなければ,級数
は発散することになります.これより,級数の収束,発散を調べるときには,この定理をまず用いてみて下さい.
例題 4..3
の収束,発散について調べてみましょう.
解
まず,
を計算してみましょう.
より
よって
は発散します.
この定理の逆は必ずしも正しくありません.例えば級数
を考えてみて下さい.この場合,数列
は0に収束しますが,この級数は次に示すように調和級数なので発散します.
定理 4..3
[一般調和級数]
証明
まず, のとき,
となるので,発散条件よりこの級数は発散します.そこで,の場合を考えます.
とおくと,
よって, は
で単調減少となるので,
が成り立つ.ここで の場合を考えてみましょう.
したがって,
これより
は上に有界な単調増加数列となるので収束.
また の場合
したがって,
最後に の場合
よって
確認問題
- 1.
-
次の級数の和を求めよう.
(a)
(b)
(c)
- 2.
-
次の循環小数を有理数で表そう.
(a)
(b)
(c)
演習問題
- 1.
-
次の級数の収束,発散を判定しよう.
(a)
(b)
(c)
- 2.
-
次の級数の和を求めよう.
(a)
(b)
(c)