を定義するのに,上に有界な単調増加数列は収束するという定理を用いました.しかし,この定理の証明には実数の連続性が必要だということをいいました.また,中間値の定理,最大・最小値の定理の証明も実数の連続性がもとになっているといいました.そこでこの辺で,実数の連続性について考えてみましょう.
実数全体の集合
を私たちはよく数直線(number line) というものに置き換えて考えます.つまりすべての実数を大小の順に並べれば,どこにも穴のないぎっしりしたものになると考えます.集合
がこのような構造をもっていることを実数の連続性といいます.この実数の連続性を数学的にもっとはっきりした形のものとしてとらえることができないでしょうか.そのためにいろいろな方法が考えられていますが,私たちは上限,下限という概念に基づいて考えていくことにしましょう.
同様に,実数のある集合 に属するどんな実数
に対しても
であるような数
が存在するとき,
は 下に有界(bounded below) であるといい,このような数
を
の 下界(lower bound) という.また上にも下にも有界な集合を単に有界(bouuded)な集合という.
解
この集合には最小数はありますが最大数はありません.しかしこの集合のすべての数は より小さいので
はこの集合の上界です.また,この集合のすべての数は 0 より大きいので 0 はこの集合の下界です.
この集合をもう少しよく見てみましょう.この集合の中には より小さいどんな数をとっても,それより大きい数がこの集合
のなかにあります.つまり
は上界の中で一番小さい数となります.このような数を上限といいます.
解
Aの上限は
,また下限は
一般に, に最大数
,最小数
があるときは,それらはそれぞれ
の上限,下限になります.また
の上限または下限が
に含まれているときには,それらはそれぞれ
の最大数,最小数になります.
上の定義より,次の定理が得られます.
に属するすべての
に対して,
である.
ならば
となるような
が
の中にある.
証明
(1)は が
の上界であることを,(2)は
より小さい数は
の上界になりえないことを表わしています.したがって,
が
の上界のうちの最小数になる.
下限についても不等号の向きを逆にすれば同様です.
ここで実数全体の集合の基本的な性質をまとめておきます.
四則演算
任意の2つの数に対して,加減乗除の四則の演算が定義されていて,演算の結果がまた1つの実数になる.また交換,結合,分配などの法則が成り立つ.
大小関係
任意の実数 は
のうちどれか1つだけ成り立つ.また任意の実数
に対して,
連続性
(1) 実数の集合 が上に有界ならば,
の上限が存在する.
(2) 実数の集合 が下に有界ならば,
の下限が存在する.
私たちは実数がこの3つの基本性質をもっているものとして話を進めていきます.このうちとくに連続性は実数で初めて成り立つ重要な性質です.例えば,
を考えると
は上に有界なので,連続性より
の上限が存在します.この場合
の上限は何でしょうか.定理1.7より
が
の上限となります.このように連続性を認めると有理数だけでは切れめができてしまう数直線の切れめをなくすことができます.
連続性をもとにして,集合
について直感的に認めてきた諸事実を1つずつ証明していくことができます.ここでは中間値の定理,数列の基礎定理を証明します.
証明
数列 を上に有界な単調増加数列とする.実数
全体の集合を
で表わすと,
は上に有界となり,実数の連続性から
に上限が存在する.この上限を
とすると定理より次の2つのことが成り立つ.
すべての
について
を任意の正の数とすると,
であるような
が
内に存在する.
ここで は単調増加だから,(2)における番号
について,
証明
であるような
全体の集合を
とする.つまり
.
は上に有界になるから上限が存在する.この上限を
とすると,
は明らかである.実はこの
が
をみたす
であることが次のようにして証明される.
まず仮に
であるとすると,演習問題1.7 により,
の適当な近傍をとることによって,そこでは
になる.つまり
次に
であるとすると,演習問題1.7 により,
の適当な近傍をとることによって,そこでは
になる.つまり
したがって,
でなければならない.