Stokesの定理
Greenの定理を アイルランドの数学者で物理学者の George Gabriel Stokes (1819-1903) が一般化したものをStokesの定理とよびます.まず,
Stokesの定理を学ぶには,曲面の向きづけを行なう必要があります.
向きづけられた曲面 の境界の曲線
に沿っての線積分を, 上での面積分に書き換える等式を与えるのがStokesの定理です.
図:
Stokesの定理
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証明
まず,
を考えよう.
より
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(4.1) |
を位置ベクトルとすると,
は の接線ベクトルとなるので,法線ベクトル
とは直交する.よって
または
これを式4.1 に代入すると,
ここで 上では
とおけるので合成関数の微分法より
となる.よって
を得る.これより
で表わせる.ここで, は を 平面に正射影したものである.右側の積分は平面上の積分で,Greenの定理より
となる. の境界上の点 での の値と, の境界上の点 での
の値は等しく,また, はどちらの曲線でも同じなので,
または
となる.同様にして,他の平面への正射影をとると,
となり,くわえると,
となる.
例題 4..4
のとき,Stokesの定理が成り立つことを示してみましょう.
解
の境界
は
の円となります.よって位置ベクトル
より線積分を求めると
次に面積分を求めてみます.
次に法線単位ベクトルを求めると
となるので
これより,
よってStokesの定理が成り立つことが示せました.
これまでに保存場では,ベクトル場はスカラー場の勾配と等しくなり,またベクトル場の回転は0になることをすでに学びました.では線積分との関係においては,どんなことが成り立つのか調べてみましょう.
定理 4..5
ベクトル場
では次の 3つの条件は同値である.
(1)
となるスカラー関数
が存在する.(
は保存場)
(2) いたるところ
が成り立つ.(渦なし)
(3) 任意の閉曲線 について
が成り立つ (積分経路無関係).
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証明
(1)
(2)
(3)
(1)を示す.
(1)
(2)
(2)
(3) 閉曲線 で囲まれた曲面 を考えて,Stokesの定理を使うと
(3)
(1) 定点P
と動点Q をむすぶ2つの曲線
をとり,Pから を経てQに至り,Qから を逆向きに通ってPに戻る道を とすると,
よって,
すなわち,PからQに至る線積分
は途中の経路に関係なく,終点Qの座標 の関数で与えられる.よってこれを
とすれば,
PからQに至る任意の曲線のベクトル方程式を
とすると,
よって
曲線PQは任意,したがって
も任意の関数でよいから,
これより,
この定理より,線積分をおこなうときに,ベクトル場がスカラー・ポテンシャルを持てば,積分をしなくとも答は0であることが分かります.
例題 4..5
を求めてみましょう.ただし, は点 から点 を通りもとに戻る曲線.
解
より,はスカラーポテンシャルを持つ.そこで,
となるを求める.
より,
ここで,
を用いると
. よって,. つまり,
. つぎに,
を用いると
. よって.ここで,とおくと,
となる.これを用いると,
例題 4..6
スカラー場
の共通の定義域内にある任意の曲面とその境界線について,次の等式を証明せよ.
解 まず,
を計算すると,
ここで,
より,
したがって,ストークスの定理より,
問 4..1
とする.任意の曲面とその境界線について次の等式を証明せよ.
演習問題4.2
- 1.
- スカラー場の共通な定義域内にある任意の曲面の境界線について次の式を証明せよ.
- 2.
-
とし,をスカラー場とする.任意の曲面とその境界線について次の式を証明せよ.
(1)
(2)
(3)
- 3.
- スカラー場とベクトル場の共通な定義域内にある任意の曲面の境界線について次の式を証明せよ.
- 4.
-
とし,をスカラー場とする.任意の曲面とその境界線について次の式を証明せよ.
- 5.
- ベクトル場は全空間で定義されているとする.任意の曲面の境界線について
ならば,はスカラー・ポテンシャルをもつ.以上のことを証明せよ.