次にドイツの数学者 Karl Friedrich Gauss (1777-1855) の名前をとってつけられた発散定理について学びます.
Gaussの発散定理
定理 4..1
[Gaussの発散定理]
ベクトル場
において,区分的に滑らかな閉曲面 で囲まれた空間の領域を とし, の内部から外部に向かう法線ベクトルを
とすると,
が成り立つ.
, を変数と見なせば,
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図:
Gaussの定理
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証明 まず, が2つの曲面
で下と上からはさまれているとします.また, は
, は
で与えられているとします.このとき,
曲面 において,曲線座標 に対する法線単位ベクトル
は
と一致していますが,曲面 では法線単位ベクトルは
に等しくなります.よって
これより,
が成り立ちます.同様にして, を他の平面に正射影することにより
を示すことができるので,これらをそれぞれ加えれば,
を得ることができます.
領域 が一般な場合には, を部分領域に分割して証明すればよいでしょう.
例題 4..1
面積分
ただし,曲面は上半球面
と
からなっているとする.
(1) この面積分をGaussの発散定理を用いて求めよ.
(2) この面積分を直接求めよ.
解 (1)
より
を求めると
よって
ここで は半径 の上半球より球面座標変換
を用いると
(2)
より,平面に正射影すると,より,
. ここで,の場合との場合を考えると,
次に,平面に正射影すると,より,
.よって,の場合との場合より,
最後に,平面に正射影すると,より,
.
次に,
における面積分を考える.まず,平面への正射影で,は
に移るので,
平面への正射影で,は
に移るので,
平面への正射影で, は
に移るので,
これらを加えると,
ここで,極座標変換を行うと,
より,
例題 4..2
とする.任意の領域とその境界面について次の等式を証明せよ.なお,領域の体積をで表す.
解
(1) 任意の定ベクトルを用いて,面積分の形に直しGaussの発散定理を用いると,
したがって,
(2) Gaussの発散定理より,
(3) 任意の定ベクトルを用いて,面積分の形に直しスカラー3重積とGaussの発散定理を用いると,
例題 4..3
スカラー場内の領域とその境界面について次の等式を証明せよ.
(1)
(2) が調和関数であれば
解
(1) 面積分の問題は必ず
の形に書き直す.この場合,
は法線単位ベクトル
方向での方向微分係数より,
.したがって,
ここで,Gaussの発散定理を用いると,
(2) が調和関数とは,
のことでした.したがって,(1)より,
定理 4..2
スカラー場とベクトル場
の共通の定義域内にある任意の領域とその境界面について
であれば,
である.
証明 Gaussの発散定理より,
であるから,
これより,
ここで,
は連続関数であり,任意の領域について上の等式が成り立つから,連続関数の性質により,
定理 4..3
ベクトル場
内の任意の領域の境界面について
ならば,
であることを証明せよ.
証明 上の定理でとすると,
であれば,
.
流管 ベクトル場
内の曲面の点を通る流線全体が作る管状の立体図形を流管といいます.この流管の断面
をとります.このとき,流管
を貫く流速は等しくなります.つまり,
この共通の値をこの流管の流速といいます.
演習問題4.1
- 1.
-
とする.任意の領域とその境界面について次の等式を証明せよ.
(1)
(2)
(3)
(4)
(5)
(6)
(7)
- 2.
- スカラー場内の任意の領域の境界面について次の等式を証明せよ.
- 3.
- ベクトル場
が
を満足しているとする.このベクトル場内にある曲面の境界線になっている閉曲線をとる.このとき,面積分
はを境界線にもつどんな曲面についても常に同一の値をもち,その値は閉曲線によって定まる.以上のことを証明せよ.このを閉曲線を貫く流速という.
- 4.
- スカラー場とベクトル場
の共通の定義域内にある,任意の領域とその境界面について次の等式を証明せよ.
(1)
(2)
(3)
(4)
ならば,
- 5.
- スカラー場
の共通の定義域内にある,任意の領域とその境界面について次の等式を証明せよ.
(1)
(2)
(3)
グリーンの公式
(4) が調和関数であれば
(5)
が調和関数であれば
(6) 上で (または,
)ならば,調和関数は内で0 (または,定数)である.
- 6.
- ベクトル場
は全空間で定義されているとする.任意の領域の境界面について
ならば,
はベクトル・ポテンシャルをもつ.以上のことを証明せよ.
- 7.
- ベクトル場
は全空間で定義されているとする.任意の領域の境界面について
ならば,
はスカラー・ポテンシャルをもつ.以上のことを証明せよ