定義 3..3
空間のベクトル場
に対して
の 回転(curl),
を次のように定義します.
形式的に
と表わします.
|
|
例題 3..19
の回転を求めてみましょう.
解
ベクトル場の回転を求めるのはそれほど難しくないことですが,ベクトル場の回転とは何かは分かりにくいものとなっています.そこで次の例を考えながらベクトル場の回転とは何かを理解しましょう.
のとき,このベクトル場によって点A
, B
, C
, D
からなる四辺形ABCDをどれだけ回転させられるか調べてみます.
まず,点A
での水平方向の成分は
.
点D
での水平方向の成分は
この2つの値の差,つまり, 水平方向の成分の差
が正のとき,四辺形 ABCD は時計回りに回転します.また,点 A,Bでの垂直方向の成分の差
が正のとき,四辺形 ABCD は反時計回りに回転します.よって
はベクトル場
が四辺形に与える回転力の大きさとなり,その力の方向は右ねじの法則より四辺形に垂直な方向
となります.これがcurlの名前の由来です.このことから
のときベクトル場
は渦なしとなります.
例題 3..20
が保存場ならば,
を示してみましょう.
解
が保存場より,
となる が存在します.よって
を求めると
定理 3..2
任意のスカラー場と任意のベクトル場
について次の式が成り立つ.
例題 3..21
とし,
を定ベクトルとする.次の等式を証明せよ.
(1)
(2)
とすると,
したがって,
スカラー・ポテンシャル
ベクトル場
がポテンシャルを持てば,
であるから,定理3.2によって,
となります.逆はどうでしょうか.
定理 3..3
全空間で定義されたベクトル場
について
ならば,ベクトル場
はポテンシャルを持つ
例題 3..22
を求めてみましょう.ただし,
(1) は閉曲線
(2) は点
から点
に至る曲線.
解
(1)
より,
(2)
はスカラーポテンシャルをもつので,実際にスカラーポテンシャルを求める.
より,
.ここで,
に注意すると,
ベクトル・ポテンシャル
ベクトル場
に対して,
となるベクトル場が存在するとき,ベクトル場
はベクトル・ポテンシャルを持つといいます.ここで,ベクトル場
がベクトル・ポテンシャルを持つならば,定理3.2より,
となるので,
が成り立ちます.逆はどうでしょうか.
定理 3..4
全空間で定義されたベクトルば
について,
ならば,ベクトル場
はベクトル・ポテンシャルを持つ.
演習問題を解くために,新たな記号を導入します.ベクトル場
とナブラの形式的内積
は演算子です.これをスカラー場とベクトル場
に作用させると,
と表すことができます.
公式
とその証明.
演算子を含んだ式を処理するには,を
とおいて,を作用させ,その後ベクトル代数で学んだ,スカラー3重積,ベクトル3重積を用いて処理する.
上の式で
と
を入れ替えると,
この2つの式を加えると,
したがって,
演習問題3.6
- 1.
- ベクトル場
とする.次のものをもとめよ.
(1)
(2)
(3)
- 2.
-
が
を満足するようにを定めよ.
- 3.
-
であれば,
であることを証明せよ.
- 4.
-
を定ベクトルとする.任意のベクトル場
について次の式を証明せよ.
(1)
(2)
(3)
- 5.
- 任意のベクトル場
について次の式を証明せよ.
- 6.
- とをスカラー場とする.
であれば,
であることを証明せよ.