度数分布表(Frequency Tabulations)

サンプリング

データの収集過程やサイコロを投げるなどの試行を繰り返すことにより結果を得る過程をサンプリング(sampling)といいます.サンプリングの結果えられたものをサンプル(sample)または標本といいます.

例えば,次のようなデータを得たとしましょう.

例題 1..1  


表: がん患者のヘモグロビン濃度
13.6 14.8 13.7 14.2 11.5
11.9 13.8 14.6 14.2 12.7
13.4 11.5 11.9 14.8 12.7
12.4 15.3 15.2 13.5 15.0
12.4 12.0 13.8 11.7 10.0
13.2 15.5 14.0 13.5 15.0
12.7 12.9 13.7 15.1 13.5
15.7 12.7 15.7 10.9 14.0
14.8 14.0 13.8 12.7 11.9
12.0 11.4 11.1 13.7 13.2

このデータを見ただけでは,どんな結果がでたのか分かりにくいので,これらのデータを整理して分かりやすい表にすることを考えます.データの整理の方法として度数分布表(frequency table)を用いることがよくありますので,度数分布表の作り方を学びます.

データの値を$ x_{i}$で表すとき,$ x_{i}$が現れる回数を度数(frequency)といい,$ f_{i}$で表すと,

$\displaystyle f_{1}+f_{2}+\cdots+f_{k} = n$

ただし,$ n$はデータの数です.これより,度数を表にしたものを作成することができます.


可能な値 度数
$ x_{1}$ $ f_{1}$
$ x_{2}$ $ f_{2}$
$ \vdots$ $ \vdots$
$ x_{k}$ $ f_{k}$
合計 n

しかし,データの多くは小数点以下を切り捨てたり,四捨五入したりして得たものなので,$ x_{i}$という値で表を作成する代わりに,$ a$以上$ b$未満での度数という形で表を作成します.このとき,データを$ a$以上$ b$未満というようないくつかの区間に分けて集計するときの各区間を階級(class interval)といい,$ a \sim b$で表します.そして, 区間の幅つまり$ b-a$階級幅(class interval width)といいます.それぞれの区間の端点の相加平均 $ \displaystyle{\frac{a + b}{2}}$階級値(midpoint)といいます.また,全標本の個数$ n$に対する各階級の度数の割合$ f_{i}/n$相対度数(relative frequency)いいます. さらに,統計解析のために$ f_{i}$以下の度数の合計

$\displaystyle F_{i}=f_{1}+f_{2}+\cdots+f_{i}$

を考えます.これを累積度数といいます.これらを用いて表したものが度数分布表(frequency distribution)です. では,上記のデータを用いて度数分布表を作成してみましょう.データの値が10.0〜15.7なので,階級幅を0.9にとると7個の階級を用いることにより全てのデータを含むことが可能です.ただし,データの値が階級の境界値となるのはおかしいので,最初の階級を9.95から始めます.


表: 度数分布表
階級 階級値 度数 相対度数 累積度数 累積相対度数
9.95 $ \sim$ 10.85 10.4 1 0.02 1 0.02
10.85 $ \sim$ 11.75 11.3 6 0.12 7 0.14
11.75 $ \sim$ 12.65 12.2 7 0.14 14 0.28
12.65 $ \sim$ 13.55 13.1 12 0.24 26 0.52
13.55 $ \sim$ 14.45 14.0 12 0.24 38 0.76
14.45 $ \sim$ 15.35 14.9 9 0.18 47 0.94
15.35 $ \sim$ 16.25 15.8 3 0.06 50 1.00

度数分布表を図(棒グラフ)で表したものをヒストグラム(histogram) といいます.また,変量の小さい階級から順に度数を加えていったものを累積度数(cumulative distribution function) といいます.

図: ヒストグラム
\includegraphics[width=6cm]{STATFIG/rei1-1.eps}
図: 累積度数分布図
\includegraphics[width=6cm]{STATFIG/rei1-2.eps}

Sturgesの式

データ数$ n$に対して階級数を決める一つの目安にスタージスの式があります.

階級数 = $ 1 + \frac{\log_{10}{n}}{\log_{10}{2}} $
この式を用いて例題(1.1)の階級数を求めてみると,標本数$ n$が50より,階級数$ k$

$\displaystyle k = 1 + \frac{\log_{10}{50}}{\log_{10}{2}} = 1 + 3.32\log_{10}{50} = 1+3.32(1.699) = 6.64 \approx 7$

となります.また,階級幅は(最大値-最小値)/階級数で求まるので,階級幅は(15.7-10.0)/6.64 = 0.86となります.したがって,階級幅を0.9とすると階級数は7となります.

標本の代表値

度数分布表が得られると,データ全体を視覚的に把握することができるようになります.しかしながら,それはあくまで直感的なことです.そこで,直感に頼るのではなく理論的にデータを処理するために,データの特徴を数値で表します.

代表値 : 分布の特徴を代表する数値

変量$ x$に関する$ n$個のデータ $ x_{1},x_{2},\ldots,x_{n}$が与えられたとき,

$\displaystyle T = x_{1} + x_{2} + \cdots x_{n} = \sum_{i=1}^{n}x_{i} $

標本総計値(total)といいます. また,

$\displaystyle \overline{x} = \frac{x_{1} + x_{2} + \cdots x_{n}}{n} = \frac{1}{n}\sum_{i=1}^{n}x_{i} = \frac{T}{n}$

標本平均値(mean)といいます.また変量$ x$の値が $ x_{1},x_{2},\ldots,x_{k}$で,その度数が $ f_{1},f_{2},\ldots,f_{k}$で与えられているとき,標本総計値は

$\displaystyle T = x_{1}f_{1} + x_{2}f_{2} + \cdots + x_{n}f_{n} $

となるので,標本平均値は

$\displaystyle \overline{x} = \frac{x_{1}f_{1} + x_{2}f_{2} + \cdots + x_{n}f_{n}}{n} = \frac{1}{n} \sum_{i=1}^{k}x_{i}f_{i} $

で与えられます.

変量の測定値を,大きさの順に並べたとき,中央の位置にくるものを,ミディアン(median)または中央値といいます.データの数$ n$が偶数のときは第 $ \displaystyle{\frac{n}{2}}$番目と第 $ \displaystyle{\frac{n}{2} + 1}$番目の変量の平均が中央値.また,データの数$ n$が奇数のときは第 $ \displaystyle{\frac{n+1}{2}}$番目の変量が中央値となります.

度数が最も大きい標本値$ x_{i}$,または階級値$ m_{i}$モード(mode)または最頻値といいます.

確認問題

統計学演習問題 1

1. 次のデータについて,スタージェスの式をもちいて度数分布表・ヒストグラム・累積度数分布図を作成しよう.また,平均値,最大値,最小値,中央値,最頻値を求めよう.

コンクリート円柱の引っ張りの強さ$ (g/cm^2)$

320 380 340 410 380 340 360 350 320 370
350 340 350 360 370 350 380 370 300 420
370 390 390 440 330 390 330 360 400 370
320 350 360 340 340 350 350 390 380 340
400 360 350 390 400 350 360 340 370 420
420 400 350 370 330 320 390 380 400 370
390 330 360 380 350 330 360 300 360 360
360 390 350 370 370 350 390 370 370 340
370 400 360 350 380 380 360 340 330 370
340 360 390 400 370 410 360 400 340 360