波動方程式(Wave equation)

次に水平に張られた弾性弦が微小振動するとき,位置$x$,時刻$t$において弦の垂直方向の変位$u(x,t)$がみたす偏微分方程式について考えてみましょう.

図: 弾性弦の振動
\includegraphics[width=8cm,scale=1.1]{DFQ/Fig2-5.eps}

まず2点間に張った弦を考えます.弦をはじいて振動させます.このとき振幅は小さいものとします.また弦の張力は他の力に比べて大きいものとします.振動している弦の方程式をみつけるため$x_{1}$から $x_{1}+ \Delta x$の間の弦の小さな部分について調べます.

水平方向には動きがないので,水平方向の力はつりあっています.よって

$\displaystyle \vert T_{1}\vert\cos{\alpha} = \vert T_{2}\vert\cos{\beta} = T =$   定数$\displaystyle    ($水平方向$\displaystyle ) . $

また垂直方向の力の差は,運動方程式より質量 $\rho \Delta s$と加速度$u_{tt}$の積で表わされます.ただし$\rho$は単位長での質量,$\Delta s$はいま考えている弦の小さな部分の長さ.よって

$\displaystyle \vert T_{2}\vert\sin{\beta} - \vert T_{1}\vert\sin{\alpha} = \rho \Delta s u_{tt}    ($垂直方向$\displaystyle ) . $

ここで振動が小さいことに注意すると, $\Delta s \approx \Delta x$. 両辺を$T$で割ると

$\displaystyle \frac{\rho \Delta x}{T} u_{tt} \approx \tan{\beta} - \tan{\alpha}. $

両辺を$\Delta x$で割り,接線の傾きと微分係数は等しいことを用いると,

$\displaystyle \frac{\rho}{T}u_{tt} \approx \frac{u_{x}(x_{1}+\Delta x , t) - u_{x}(x_{1},t)}{\Delta x}. $

ここで $\Delta x \rightarrow 0$とすると,

$\displaystyle \frac{\rho}{T} u_{tt} = u_{xx}  $   または$\displaystyle   u_{tt} = c^{2}u_{xx}. $

これは一次元波動方程式(one dimensional wave equation)とよばれます.

初期条件は$t=0$のときの弦の形状および初速度を指定する条件です.たとえば,初期の形状が$y = f(x)$である弦に初速度$g(x)$を与えた場合には,初期条件は

$\displaystyle u(x,0) = f(x) ,   u_{t}(x,0) = g(x) $

となります.また弦が有限な長さ$L$をもつとき,境界条件については,たとえば次のものが考えられます.

(i) 弦の両端を固定するとき

$\displaystyle u(0,t) = 0,   u(L,t) = 0. $

(ii) 弦の両端点が振動方向に自由に動けるとき

$\displaystyle u_{x}(0,t) = 0,   u_{x}(L,t) = 0. $

薄い膜の振動は,膜が静止の状態では$xy$平面に位置し,時刻$t$における垂直方向の変位が$u(x,y,t)$であるとすると,次の二次元波動方程式(two dimensional wave equation)で表わされます.

$\displaystyle u_{tt} = c^{2}(u_{xx} + u_{yy}). $

この方程式を極座標 $(r,\theta)$で表わすと,次のようになります.

$\displaystyle u_{tt} = c^{2}(u_{rr} + \frac{1}{r}u_{r} + \frac{1}{r^{2}}u_{\theta\theta}).$

例題 7..12  

両端が固定されている長さ$L$の水平に張られた弾性弦の初期形状が$f(x)$で与えられているとき,この弦の垂直方向の変位を求めよ.

まず弾性弦の垂直方向の変位を$u(x,t)$とすると,$u(x,t)$は一次元波動方程式 $u_{xx} = (1/c^{2})u_{tt} ( 0 < x < L, t > 0)$を満たす.次に,初期条件は

$\displaystyle u(x,0) = f(x), u_{t}(x,0) = 0 $

と表わせる.また両端が固定されているので,境界条件は

$\displaystyle u(0,t) = u(L,t) = 0. $

ここでは変数分離法を用いて一次元波動方程式を解く. $u(x,t) = X(x)T(t)$とおき,一次元波動方程式に代入すると

$\displaystyle \frac{X^{\prime\prime}}{X} = \frac{T^{\prime\prime}}{c^{2}T} = \lambda . $

これよりただちに次の微分方程式を得る.

$\displaystyle X^{\prime\prime} - \lambda X = 0,   T^{\prime\prime} - c^{2}\lambda T = 0 . $

ここで$u$の境界条件を用いると,すべての$t$に対して

$\displaystyle u(0,t) = X(0)T(t) = 0, $

$\displaystyle u(L,t) = X(L)T(t) = 0 $

となる.これは$T(t)$が0でないならば, $X(0) = X(L) = 0$を意味する.よってこれよりSturn-Liouville問題

$\displaystyle X^{\prime\prime} - \lambda X = 0,   X(0) = X(L) = 0 $

を得る.すでに学んだように,この問題は固有値 $\lambda_{n} = -n^{2}\pi^{2}/L^{2}$,固有関数 $X_{n}(x) = \sin{(n\pi x/L^{2})}$をもっている.さらに,固有値が $\lambda_{n} = -n^{2}\pi^{2}/L$のとき,

$\displaystyle T^{\prime\prime} - c^{2}\lambda_{n}T = 0 $

の一般解は

$\displaystyle T_{n}(t) = C_{n}\cos{\frac{n\pi ct}{L}} + D_{n}\sin{\frac{n\pi ct}{L}} $

で与えられる.

$X_{n}(x)$$T_{n}(t)$の積

$\displaystyle u_{n}(x,t) = \sin{\frac{n\pi x}{L}}(C_{n}\cos{\frac{n\pi ct}{L}} + D_{n}\sin{\frac{n\pi ct}{L}}) $

は一次元波動方程式を満たし,さらに境界条件を満たしている.よって重ね合わせの原理より

$\displaystyle u(x,t) = \sum_{n=1}^{\infty}u_{n}(x,t) = \sum_{n=1}^{\infty}\sin{\frac{n\pi x}{L}}(C_{n}\cos{\frac{n\pi ct}{L}} + D_{n}\sin{\frac{n\pi ct}{L}}). $

ここで初期条件 $u(x,0) = f(x)$より,

$\displaystyle u(x,0) = \sum_{n=1}^{\infty}C_{n}\sin{\frac{n\pi x}{L}} \equiv f(x). $

この条件が満たされるためには,この級数が$f(x)$に収束するように$C_{n}$を選ばなければならない.ところがこれは皆さんがよく知っている関数$f(x)$$[0,L]$でのフーリエ正弦級数展開である.よって

$\displaystyle C_{n} = \frac{2}{L}\int_{0}^{L}f(x)\sin{\frac{n\pi x}{L}} dx $

で与えられる.

$D_{n}$を見つける方法もほとんど同じである.$u(x,t)$$t$について項別微分可能であるとすると,

$\displaystyle 0 \equiv u_{t}(x,0) = \sum_{n=1}^{\infty}\frac{n\pi c}{L}\sin{\frac{n\pi x}{L}}. $

これより, $(n\pi c/L)D_{n}$は0のフーリエ正弦級数となるので

$\displaystyle D_{n} = \frac{2}{n\pi c}\int_{0}^{\infty}0 \sin{\frac{n\pi x}{L}} dx = 0 $

で与えられる. $ \blacksquare$

例題 7..13  

四角いドラムの薄い膜の振動は次の境界値問題として表わされる.
$\displaystyle u_{tt} = c^{2}\Delta_{2}u ,$   $\displaystyle 0 < x < 1,  0 < y < 1,  t > 0$  
$\displaystyle u(0,y,t) = 0,   $   $\displaystyle u(1,y,t) = 0,  u(x,0,t) = 0 ,  u(x,1,t) = 0$  
$\displaystyle u(x,y,0) = f(x,y),   $   $\displaystyle u_{t}(x,y,0) = g(x,y)$  

この境界値問題を初期速度 $g(x,y) = 0$のとき解け.

変数分離法を用い, $u(x,y,t) = X(x)Y(y)T(t)$を仮定し,これを二次元波動方程式に代入すると

$\displaystyle \frac{X^{\prime\prime}}{X} + \frac{Y^{\prime\prime}}{Y} = \frac{T^{\prime\prime}}{c^{2}T} $

となる.ここで左辺は$t$と独立であり,右辺は$x, y$と独立なので,両辺とも定数となり,この定数を$\lambda$とおくと

$\displaystyle \frac{X^{\prime\prime}}{X} + \frac{Y^{\prime\prime}}{Y} = \frac{T^{\prime\prime}}{c^{2}T} = \lambda. $

これより

$\displaystyle \frac{X^{\prime\prime}}{X} = - \frac{Y^{\prime\prime}}{Y} + \lambda $

となり,ここでも左辺と右辺は定数となるので,この定数を$\alpha$とおくと次の3つの微分方程式を得る.

$\displaystyle X^{\prime\prime} - \alpha X = 0 ,$

$\displaystyle Y^{\prime\prime} - \beta Y = 0 ,$

$\displaystyle T^{\prime\prime} - c^{2}\lambda T = 0 ,$

ただし, $\beta = \lambda - \alpha$. ここで境界条件

$\displaystyle u(0,y,t) = u(1,y,t) = 0 ,   u(x,0,t) = u(x,1,t) = 0 $

を用いると,Sturn-Liouville問題

$\displaystyle X^{\prime\prime} - \alpha X = 0,  X(0) = X(1) = 0, $

$\displaystyle Y^{\prime\prime} - \beta Y = 0,  Y(0) = Y(1) = 0 $

が得られる.この境界値問題の固有値と固有関数はそれぞれ
$\displaystyle \alpha_{m}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle -m^{2}\pi^{2} ,   X_{m}(x) = \sin{m\pi x}  (m = 1,2,3,\ldots),$  
$\displaystyle \beta_{n}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle -n^{2}\pi^{2} ,   Y_{n}(x) = \sin{n\pi y}  (n = 1,2,3,\ldots)$  

で与えられる.この $\alpha_{m}, \beta_{n}$に対して,$T$

$\displaystyle T_{mn}(t) = C_{mn}\cos{\sqrt{m^{2}+n^{2}}}\pi ct + D_{mn}\sin{\sqrt{m^{2}+n^{2}}}\pi ct .$

ここで初期条件 $u_{t}(x,y,0) = 0$より $T^{\prime}(0) = 0$となるので $D_{mn} = 0$.よって

$\displaystyle T_{mn}(t) = C_{mn}\cos{\sqrt{m^{2}+n^{2}}}\pi ct .$

こうして,境界条件と初期条件を満たす解の列

$\displaystyle u_{mn}(x,y,t) = \sin{m\pi x}\sin{n\pi y}C_{mn}\cos{\sqrt{m^{2}+n^{2}}}\pi ct $

が得られる.これらを重ね合わせて

$\displaystyle u(x,y,t) = \sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}\sin{m\pi x}\sin{n\pi y}C_{mn}\cos{\sqrt{m^{2}+n^{2}}}\pi ct $

が得られる.初期条件 $u(x,y,0) = f(x,y)$が満たされるためには

$\displaystyle u(x,y,0) = \sum_{m=1}^{\infty}\sum_{n=1}^{\infty}C_{mn}\sin{m\pi x}\sin{n\pi y} = f(x,y) $

が成り立たなければならない.この式から$C_{mn}$を定めよう.

$\displaystyle C_{m} = \sum_{n=1}^{\infty}C_{mn}\sin{n\pi y} $

とおくと

$\displaystyle f(x,y) = \sum_{m=1}^{\infty}C_{m}\sin{m\pi x} $

と表わせる.これらはどちらもフーリエ正弦級数なので,その係数は
$\displaystyle C_{mn}$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac{2}{1}\int_{0}^{1}C_{m}\sin{n\pi y}dy$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle \frac{2}{1}\int_{0}^{1}[\frac{2}{1}\int_{0}^{1}f(x,y)\sin{m\pi x}dx]\sin{n\pi y}dy$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle 4\int_{0}^{1}\int_{0}^{1}f(x,y)\sin{n\pi x}\sin{n\pi y}dxdy .$  

この$C_{mn}$$u(x,y,t)$に代入すると解が得られる. $ \blacksquare$