関数の定義(definition of function)

2つの集合の間の関係を決める規則を関数といいます.ここでは,実数の集合を考えます. $ {\mathcal R}$ を実数全体の集合とします.

ある実数の集合 $ D$ に属する各数 $ x$ に対して,実数 $ y$ が1つ定まるような規則 $ f$$ D$ から $ {\mathcal R}$ への 1価関数(single-valued function),または単に関数といいます.また,各数 $ x$ に対して,実数 $ y$ が2つ以上定まるような規則を 多価関数(multi-valued function) といい, 共に $ f : D \longrightarrow {\mathcal R}$ で表わし, $ y$$ x$ の関数であるといい, $ y = f(x)$ で表わします.このとき, $ x$ を独立変数, $ y$ を従属変数といいます.

例題 1..1  

$ -1 \leq x \leq 1$ の各数 $ x$ に対して,実数 $ y$$ x$ の 2乗を 4倍したものと, $ x$ の 3乗を -3倍したものの和となるように定めた規則 $ f$ は 1価関数でしょうか.また, $ f(x)$ を求めてみましょう.

各数 $ x$ に対して, $ 4x^2 - 3x^3$ という実数 $ y$ が1つ定まるので $ f$ は1価関数です.また, $ f(x) = 4x^2 - 3x^3$ となります. $  \blacksquare$

このように変数 $ x$ と定数との間に足し算,引き算,掛け算という3つの演算を用いて得られた関数 $ f(x) = 4x^2 - 3x^3$ を整式といいます.また, $ f(x)$$ x$ の2乗の6倍と $ x$ を3倍したものの和で割って得られる関数

$\displaystyle g(x) = \frac{f(x)}{6x^2 + 3x} = \frac{4x^2 - 3x^3}{6x^2 + 3x}$

を有理関数といいます.さらに, $ g(x)$ の平方根をとって得られる関数

$\displaystyle h(x) = \sqrt{g(x)} = \sqrt{\frac{4x^2 - 3x^3}{6x^2 + 3x}} $

を無理関数といいます.

上の関数の定義にでてきた $ D$ を関数 $ f$定義域(domain) といい $ D(f)$ で表わします.つまり, $ D(f)$$ f(x)$ が実数となるような実数 $ x$ の集合のことです.そこで,これを

$\displaystyle D(f) = \{x \in {\mathcal R} : f(x) \in {\mathcal R}\} $


と表わします.ここで, $ x \in R$ とは, $ x$$ R$ の元である.つまり $ x$ は実数であることを意味しています.

また, $ f(x)$$ x$像(image) といい,その集合を 値域(range) といい $ R(f)$ で表わします.つまり,

$\displaystyle R(f) = \{y \in {\mathcal R} : y = f(x), x \in D(f) \} $


これら $ x$$ f(x)$$ xy$ 平面上に点として描いていくと,関数 $ f$ のグラフとよばれるものができます.つまり,集合 $ \{(x,y) : y = f(x), x \in D(f) \}$ が関数 $ f$グラフ(graph) で, $ G(f)$ で表わします.

例題 1..2  

$ \displaystyle{g(x) = \frac{4x^2 - 3x^3}{6x^2 + 3x}}$ の定義域を求めてみましょう.

$\displaystyle D(g) = \{x \in R: g(x) \in R\} = \{x \in R: \frac{4x^2 - 3x^3}{6x^2 + 3x} \in R \} $

ここで, $ \displaystyle{\frac{4x^2 - 3x^3}{6x^2 + 3x}}$ が実数になるには分母が $ 6x^2 + 3x \neq 0$ であることに注意すると, $ 6x^2 + 3x = 3x(2x + 1) \neq 0$ より

$\displaystyle D(g) = \{x : x \neq 0, -\frac{1}{2} \} = (-\infty, -\frac{1}{2}) \cup (-\frac{1}{2}, 0) \cup (0, \infty)
\ensuremath{ \blacksquare}$

例題 1..3  

$ \displaystyle{f(x) = \sqrt{x^{2} - 1}}$ の定義域と値域を求め, $ f(x)$ のグラフを描いてみましょう.


$\displaystyle D(f)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \{x \in R : f(x) \in R\} = \{x \in R:\sqrt{x^2 - 1} \in R\} = \{x : x^2 - 1 \geq 0\}$  
  $\displaystyle =$ $\displaystyle (-\infty, -1] \cup [1,\infty)$  

また値域は

$\displaystyle R(f) = \{y \in R:y = f(x), x \in D(f)\} = \{y \in R: 0 \leq y\} $

となり,そのグラフは図1.1 で与えられます. $  \blacksquare$

図 1.1: f(x)のグラフ
\begin{figure}\begin{center}
\includegraphics[width=6cm]{CALCFIG/Fig1-1-1.eps}
\end{center}\end{figure}

さて,関数 $f(x),g(x)$ の作られ方をみていると, $ f(x)$$ g(x)$ の間に四則の演算を定義することができるでしょう.

定義 1..1  

$ x \in D(f) \cap D(g)$ のとき,
$ \displaystyle{(1)  (f + g)(x) = f(x) + g(x)}$
$ \displaystyle{(2)  (fg)(x) = f(x)g(x)}$
$ \displaystyle{(3)  \frac{f}{g}(x) = \frac{f(x)}{g(x)}  (g(x) \neq 0)}$


例題 1..4  

区分的に定義された次の2つの関数の和,差,積を求めよう.

$\displaystyle f(x) = \left\{\begin{array}{ll}
1 - x^{2}, & x \leq 0\\
x, & x >...
...= \left\{\begin{array}{ll}
-2x, & x < 1\\
1 - x, & x \geq 1
\end{array}\right.$

区分的に定義された関数の和,差,積を求めるには,2つの関数の区分を同じにする必要があります.つまり,

$\displaystyle f(x) = \left\{\begin{array}{ll}
1 - x^{2}, & x \leq 0\\
x, & 0 <...
...ll}
-2x, & x \leq 0\\
-2x, & 0 < x < 1\\
1 - x, & x \geq 1
\end{array}\right.$

とします.こうすれば,後は対応する区分での和,差,積をとればよいことになります.したがって,
$\displaystyle f(x) + g(x)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \left\{\begin{array}{ll}
1-2x-x^{2}, & x \leq 0\\
-x, & 0 < x < 1\\
1, & x \geq 1
\end{array}\right.$  
$\displaystyle f(x) - g(x)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \left\{\begin{array}{ll}
1+2x-x^{2}, & x \leq 0\\
3x, & 0 < x < 1\\
-1 + 2x, & x \geq 1
\end{array}\right.$  
$\displaystyle f(x)g(x)$ $\displaystyle =$ $\displaystyle \left\{\begin{array}{ll}
-2x+2x^{3}, & x \leq 0\\
-2x^{2}, & 0 < x < 1\\
x-x^{2}, & x \geq 1
\end{array}\right.$  

となります. $  \blacksquare$

合成関数(composite functions)

1.1 で関数どうしの四則の演算について学びました.ここでは関数どうしのつなぎ方として,合成法則(composition) とよばれる方法について考えます.

まず, $ f(x)$$ g(x)$2つの関数を用意します.次に任意の $ x$ に対して規則 $ g$ を用いて1つの実数 $ g(x)$ を取り出します.もしこの $ g(x)$ が関数 $ f(x)$ の定義域に入っていれば,規則 $ f$ を用いて1つの実数 $ f(g(x))$ を取り出すことができるでしょう.ところで,この実数 $ f(g(x))$ は何なのでしょうか.

もし $ g(x)$ の値域が $ f(x)$ の定義域に含まれていれば, $ g(x)$ の定義域内の各数 $ x$ に対して, $ f(g(x))$ を作ることができます.これは $ g(x)$ の定義域内の各数 $ x$ に対し,ただ1つの実数 $ f(g(x))$ を定める規則と考えられます.よってこの規則を $ f$$ g$合成関数(composite function) といい, $ f \circ g$ で表わすと $ (f \circ g)(x) = f(g(x))$ となります.

例題 1..5  

$ \displaystyle{f(x) = x^2 - 5}$ $ \displaystyle{g(x) = \frac{1}{x} + 1}$ のとき $ (f \circ g)(x), (g \circ f)(x)$ を求めてみましょう.

$\displaystyle (f \circ g)(x) = f(g(x)) = (g(x))^2 - 5 = (\frac{1}{x} + 1)^2 - 5 $

となり,また $ (g \circ f)(x)$ を求めると

$\displaystyle (g \circ f)(x) = g(f(x)) = \frac{1}{f(x)} + 1 = \frac{1}{x^2 - 5} + 1 = \frac{x^2 -4}{x^2 - 5} $

となります. $  \blacksquare$

このように,合成の順序を変えると答が違ってくることがあります.これは実生活の中でも経験します.例えば,$ 10,000$ 円の商品を $ 1$ 割増しにしたものを $ 1,000$ 円引で売るのと,$ 1,000$ 円引にしてから $ 1$ 割増しにするので値段が違うことと同じ関係です.

逆関数(inverse functions)

関数 $ f$ の定義域 $ D(f)$ 内の任意の2数 $ x_{1},x_{2}$ に対して,

$\displaystyle x_{1} \neq x_{2} \Longrightarrow f(x_{1}) \neq f(x_{2}) $

が成り立つとき, $ f$1対1の関数(one-to-one function) であるといいます.ここで $ x_{1} \neq x_{2} \Rightarrow f(x_{1}) \neq f(x_{2})$ とは, $ x_{1}$$ x_{2}$ が異なるならば, $ f(x_{1})$$ f(x_{2})$ は異なることを意味しています.この場合,値域 $ {\mathcal R}(f)$ の各数 $ y$ に対して, $ y = f(x)$ であるような $ x$ を1つ定めるような規則が考えられます(なぜでしょうか).これを $ f$逆関数(inverse function) とよび, $ f$ には逆関数が存在するといいます.また, $ f$ の逆関数を $ f^{-1}$ で表わします.$ f^{-1}$ の定義域は $ {\mathcal R}(f)$ で値域は $ D(f)$ です.つまり,

$\displaystyle f^{-1} : {\mathcal R}(f) \longrightarrow D(f),  x = f^{-1}(y) \Leftrightarrow y = f(x) $

です.なお,このとき $ f^{-1}$ の独立変数は $ y$ で,従属変数は $ x$ ですが,独立変数を表わすときは $ x$ を使うのになれているので, $ x$$ y$ を入れ替えて $ y = f^{-1}(x)$ と表わすことがよくあります.つまり,

$\displaystyle y = f^{-1}(x) \Leftrightarrow x = f(y) $

合成関数を用いて表わすと

$\displaystyle y = f^{-1}(x) \Leftrightarrow f(f^{-1}(x)) = x $

となります.

例題 1..6  

$ \displaystyle{y = f(x) = x^3 + 1}$ は 1対1の関数か調べてみましょう.

1対1であるためには

$\displaystyle x_{1} \neq x_{2} \Longrightarrow f(x_{1}) \neq f(x_{2}) $

を示せばよいのですが,実際の問題ではこの対偶をとって

$\displaystyle f(x_{1}) = f(x_{2}) \Longrightarrow x_{1} = x_{2} $

を示すほうが簡単です.そこで
$\displaystyle f(x_{1}) = f(x_{2})$ $\displaystyle \Longrightarrow$ $\displaystyle x_{1}^3 + 1 = x_{2}^3 + 1$  
  $\displaystyle \Longrightarrow$ $\displaystyle x_{1}^3 = x_{2}^3$  
  $\displaystyle \Longrightarrow$ $\displaystyle (x_{1} - x_{2})(x_{1}^2 + x_{1}x_{2} + x_{2}^2) = 0$  
  $\displaystyle \Longrightarrow$ $\displaystyle (x_{1} - x_{2})[(x_{1} + \frac{x_{2}}{2})^2 + \frac{3x_{2}^2}{4}] = 0$  
  $\displaystyle \Longrightarrow$ $\displaystyle x_{1} = x_{2}$  

より $ f(x)$ は1対1の関数であることが示せました. $  \blacksquare$

関数のグラフが描ける場合,$ x$軸と平行に線を引いて,2点以上グラフと交わるとこの関数は1対1ではありません.

もう少しして,微分について学ぶと関数 $ f$ が1対1か調べるのに便利な方法があります. 関数 $ f$ の定義域 $ D(f)$ に含まれる任意の2数 $ x_{1},x_{2}$ に対して,

$\displaystyle x_{1} < x_{2} \Leftrightarrow f(x_{1}) < f(x_{2}) $

が成り立つとき, $ D(f)$ において,関数 $ f$狭義の単調増加関数(strictly increasing function) であるといい,

$\displaystyle x_{1} < x_{2} \Leftrightarrow f(x_{1}) > f(x_{2}) $

が成り立つとき, $ D(f)$ において,関数 $ f$狭義の単調減少関数(strictly decreasing function) であるといいます. これらをあわせて狭義の単調関数といいます.この定義から明らかなように(なぜなら $ f(x_{1})$$ f(x_{2})$ はいつも異なる),狭義の単調関数は1対1になります.よって次の定理を得ます.

定理 1..1  

[逆関数定理] 狭義の単調増加(または減少)関数 $ f$ に対して,関数 $ f^{-1}$ が存在し,すべての $ x \in R(f)$ に対し

$\displaystyle f(f^{-1}(x)) = x $

が成り立つ.


例題 1..7  

逆関数定理を利用して

$\displaystyle y = f(x) = \frac{3x + 1}{x - 2},  -\infty < x < 2 $

の逆関数 $ f^{-1}$ を求めてみましょう.

まず,この関数が1対1の関数であることを示します.

$\displaystyle f(x_{1}) = f(x_{2})$ $\displaystyle \Longrightarrow$ $\displaystyle \frac{3x_{1} + 1}{x_{1} - 2} = \frac{3x_{2} + 1}{x_{2} - 2}$  
  $\displaystyle \Longrightarrow$ $\displaystyle 3x_{1}x_{2} - 6x_{1} + x_{2} - 2 = 3x_{1}x_{2} + x_{1} - 6x_{2} - 2$  
  $\displaystyle \Longrightarrow$ $\displaystyle -7x_{1} +7x_{2} = 0$  
  $\displaystyle \Longrightarrow$ $\displaystyle x_{1} = x_{2}$  

次に $ f(f^{-1}(x)) = x$ を用います.

$\displaystyle f(f^{-1}(x)) = f(y) = \frac{3y + 1}{y - 2} = x $

これを $ y$ について解くと $ 3y + 1 = xy - 2x $.よって $ \displaystyle{y = f^{-1}(x) = \frac{2x + 1}{x - 3}}$ となります. $  \blacksquare$

確認問題


1.
$ x$の値が1のとき$ f(x)$の値を求めよう.

(a) $ \displaystyle{f(x) = \vert 2-x\vert}$ (b) $ \displaystyle{f(x) = 4 + 10x - x^{2}}$ (c) $ \displaystyle{f(x) = 1 + \cos{(x-1)}}$

2.
次の関数の定義域と値域を求めよう.

(a) $ \displaystyle{f(x) = x^{2} - 1}$ (b) $ \displaystyle{g(x) = \sqrt{1-x}}$ (c) $ \displaystyle{h(x) = \vert\sin{x}\vert}$

3.
$ y = \frac{1}{x}$および $ y = \sqrt{x}$のグラフをもとに次の関数のグラフの概形を描こう.

(a) $ \displaystyle{y = \frac{1}{x} + 1}$ (b) $ \displaystyle{y = \sqrt{1 - x}}$

4.
次の関数 $ f(x),g(x)$ について, $ (f \circ g)(x)$$ g(f(x))$ を求めよう.

(a) $ \displaystyle{f(x) = 2x+5,  g(x) = x^{2}}$(b) $ \displaystyle{f(x) = \frac{1}{x}, g(x) = \frac{1}{x}}$

(c) $ \displaystyle{f(x) = \frac{1}{x} - \frac{1}{x+1}, g(x) = \frac{1}{x^{2}}}$

5.
次の関数は1対1の関数か調べ,もしそうならば,逆関数を求めよう.

(a) $ \displaystyle{f(x) = 7x - 4}$(b) $ \displaystyle{f(x) = (x+1)^{3} + 2}$(c) $ \displaystyle{f(x) = \frac{x}{\vert x\vert}}$

6
関数$ f(x)$は, $ x \in D(f)$で, $ f(-x) = f(x)$を満たすとき偶関数(even function)であるといい, $ f(-x) = -f(x)$を満たすとき奇関数(odd function)であるといいます.次の関数は偶関数か奇関数か調べよう.

(a) $ \displaystyle{f(x) = x^{3}}$(b) $ \displaystyle{f(x) = x(x^{2} + 1)}$

演習問題


1.
次の規則は $ 1$価関数か多価関数か調べよう.

(a) $ \displaystyle{y^{2} = x,  x > 0}$ (b) $ \displaystyle{y^{3} = x^2}$

2.
次の関数の定義域を求め, $ f(x)$ のグラフを描こう.

(a) $ \displaystyle{f(x) = \sqrt{4 - x^2}}$ (b) $ \displaystyle{h(x) = \sqrt{\frac{4x^2 - 3x^3}{6x^2 + 3x}}}$

3.
次の関数 $ f(x),g(x)$ について, $ (f \circ g)(x)$$ g(f(x))$ を求めよう.

(a) $ \displaystyle{f(x) = 2x - 1,  g(x) = x^2 + 1}$

(b) $ \displaystyle{f(x) = \left\{\begin{array}{cl}
1 - x, & x \leq 0\\
x^2, & x > ...
...= \left\{\begin{array}{cl}
-x, & x < 1\\
1 + x, & x \geq 1
\end{array}\right.}$

4.
次の関数の逆関数を求めよう.

(a) $ \displaystyle{f(x) = \frac{1}{x+2},  -2 < x}$ (b) $ \displaystyle{f(x) = x^2 + 4x - 2}$

5.
次の関数は偶関数か奇関数か調べよう.

(a) $ \displaystyle{f(x) = \frac{x^{2}}{1 - \vert x\vert}}$ (b) $ \displaystyle{f(x) = \sin{x}}$

6.
次の問いに答えよう.

(a) 偶関数と偶関数の積と偶関数と奇関数の積はどうなるか.

(b) 偶関数の特徴と奇関数の特徴について述べよう.