巡回群,生成群

定理 1..13   $a$を群$G$の元とするとき,

$\displaystyle Ha = \{x \in G : a \equiv x \ $   mod$\displaystyle \ H\}$

証明 (1) $a$の位数が無限である場合:

$a^n = e$となる正の整数は存在しない.したがって, $\vert a\vert = \infty$となる.次に,集合 $<a> = \{\ldots, a^{-2}, a^{-1}, a^{0} = e, a^{1}, a^{2}, \ldots\}$を考える.このとき,$i \neq j$ならば, $a^{i} \neq a^{j}$である.もし,$i > j$ $a^{i} = a^{j}$とすると, $a^{i-j} = e\ (i-j > 0)$となり,$a^n = e$となる正の整数は存在しないと矛盾する.したがって, $\vert<a>\vert = \infty$.

(2) $a$の位数が有限の場合:

$a$の位数を$n$とすると,$n$は最小の正の整数で$a^n = e$である.ここで, $<a> = \{\ldots, a^{-2}, a^{-1}, a^{0} = e, a^{1}, a^{2}, \ldots\}$を考える.このとき, $a^{i}a^{n-i} = a^{n} = e$に注意すると, $a^{n-i} = (a^{i})^{-1} = a^{-i}$.したがって, $<a> = \{e = a^{0}, a^{1}, a^{2}, \ldots, a^{n-1}\}$.よって,$\vert<a>\vert = n$.

例題 1..15   ${\mathcal Z}_{6}$の元$\bar{4}$の位数と$<\bar{4}>$の位数を求めよ.

${\mathcal Z}_{6}$は加法群である.したがって,単位元は$\bar{0}$で, $n\bar{4} = \bar{0}$となる最小の正の整数$n$を求めると,$n = 3$となる. また, $<\bar{4}> = \{\bar{0}, \bar{2}, \bar{4}\}$より, $\vert<\bar{4}>\vert = 3$

1..35   $<(1+i)/\sqrt{2}> \leq ({\mathcal C}^*, \cdot)$の位数を求めよ.

1..36   $G$の元を$a$とするとき, $\vert a^{-1}\vert = \vert a\vert$であることを示せ..

定義 1..14   $S$を群$G$の部分集合とする.このとき,$S$を含む$G$の部分群のすべての共通部分$<S>$$G$の部分群になる(定理3.2).この$<S>$$S$により生成された$G$の部分群といい,$S$$<S>$生成系という.

定理 1..14   $G$を群として,$S$をその空でない部分集合とする.このとき,

$\displaystyle <S> = \{a_{i_{1}}^{e_{1}}a_{i_{2}}^{e_{2}}\cdots a_{i_{n}}^{e_{n}} : a_{i_{1}},\ldots,a_{i_{n}} \in S, e_{i} \in {\mathcal Z}, n \in {\mathcal N}\}$

証明 右辺を$H$とおいて,$<S> = H$を示す.

i) $H \subset <S>$を示す:

$a_{i_{1}}, \ldots, a_{i_{n}} \in S$であり,$<S>$は群であるから $a_{i_{1}}^{e_{1}}a_{i_{2}}^{e_{2}}\cdots a_{i_{n}}^{e_{n}} \in <S>$.ゆえに, $H \subset <S>$.

ii) $<S> \subset H$を示す:

定義より, $S \subset H$である.ここで,$<S>$$S$を含む最小の群であることを示す.もし, $K \leq G, S \subset K$とすると,$K$が群であるから, $<S> \subset K$. これより,$H$が群であることを示せばよいことが分かる.

$x, y \in H$とすると, $x = a_{i_{1}}^{e_{1}}\cdots a_{i_{n}}^{e_{n}}$, $y = a_{j_{1}}^{f_{1}}\cdots a_{j_{n}}^{f_{n}}$.これより, $xy^{-1} = a_{i_{1}}^{e_{1}}\cdots a_{i_{n}}^{e_{n}}a_{j_{n}}^{-f_{n}}\cdots a_{j_{1}}^{-f_{1}} \in H$.よって,$H \leq G$

$G$が加法群のとき,

$\displaystyle <S> = \{e_{1}a_{1} + \cdots e_{n}a_{n} : e_{1},\ldots, e_{n} \in {\mathcal Z}\}$

となる.

1..37   $G$の部分集合を$S$とするとき次を示せ.

$\displaystyle <S> = \{a_{i_{1}}^{\pm 1}a_{i_{2}}^{\pm 1} \cdots a_{i_{n}}^{\pm 1} : a_{i_{1}},\ldots , a_{i_{n}} \in S, n \in {\mathcal N}\}$

例題 1..16   加法群 ${\mathcal Z}_{12}$の部分集合 $S = \{\bar{1}, \bar{2}\}$によって生成された部分群を調べてみよう.

$<S> = <\bar{1}, \bar{2}> = \{e_{1}\bar{1} + e_{2}\bar{2} : e_{1}, e_{2} \in {\mathcal Z}\}$より, $\bar{1} \in <S>$.したがって, $<S> = {\mathcal Z}_{12}$

1..38   加法群 ${\mathcal Z}_{60}$の部分集合 $S = \{\bar{2}, \bar{3}, \bar{10}\}$によって生成された部分群を調べよ.

定理 1..15   $G$$a$によって生成される位数$n$の巡回群とする.このとき,$G$の元$a^k$の位数は $\displaystyle{\frac{n}{(n,k)}}$となる.ただし,$(n,k)$$n$$k$の最大公約数を表す.

証明 $d = (n,k)$とすると, $n = dn', k = dk'$より $\frac{n}{(n,k)} = \frac{n}{d} = n'$.したがって,$a^k$の位数が$n'$であることを示せばよい.

(1) $(a^k)^{n'} = a^{kn'} = a^{dk'n'} = a^{nk'} = (a^{n})^{k'} = e$

(2) $n'$ $(a^{k})^{l} = e$となる最小の正の整数であることを示す.もし,$l$ $(a^{k})^{l} = e$を満たす最小の正の整数とすると, $a^{kl} = e$より,$kl$$a$の位数で割り切れる.よって,$kl = n s$.ここで,$(n,k) = 1$より $dk' l = dn's$.したがって,$n' \vert l$

1..1   $r,s$を自然数とする.群$G$の元$a$の位数を$rs$とすると,元$a^r$の位数は$s$であり,元$a^s$の位数は$r$である.

1..39   次の問いに答えよ.

(1) ${\mathcal Z}_{60}$において,元 $\overline{12}$ $\overline{35}$の位数を求めよ.

1..2   $G$$a$によって生成される位数$n$の巡回群とする.このとき,$G$の元$a^k$$G$の生成元であるための必要十分条件は,$(n,k) = 1$となることである.

1..40   加法群 ${\mathcal Z}_{12}$の生成元を調べよ.

定理 1..16   $G$の2つの元$a, b$が可換で,位数が,それぞれ$m,n$とする.このとき,$m$$n$が互いに素であれば元$ab$の位数は$mn$である.

証明

(1) $(ab)^{mn} = a^{mn}b^{mn} = (a^{m})^n (b^{n})^m = e$.

(2) $(ab)^{l} = e$とすると,$a$$b$は可換であるから, $(ab)^l = a^l b^l = e$.ゆえに, $a^l = b^{-l}$.両辺を$m$乗すると

$\displaystyle (b^{-l})^m = (a^{l})^{m} = a^{lm} = (a^{m})^{l} = e^l = e$

したがって, $b^{-lm} = e$より $b^{lm} = e$$b$の位数は$n$なので,$n \vert lm$.このとき,$m$$n$は互いに素なので,$n \vert l$.同様にして,$m \vert l$を得る.よって,$mn \vert l$より,$mn \leq l$.