実数 の部分集合 に属する各点 に対して,実関数
が与えられるとき,1つのベクトル
を考えることができます.このベクトル
を から への1変数ベクトル値関数(vector-valued function)または ベクトル関数(vector function) といい,
または
で表わします.
しばしば
は幾何学的に実軸 から原点と点
を結ぶベクトルへの写像として扱われます.
例題 2..1
のとき,
の軌跡を求めてみましょう.
解
の成分は
であるから,
となり,
の軌跡
は放物面
上にあることが分かります.
定義 2..1
ベクトル関数
において,
のとき,
ならば,
の極限値は であるといい,次のように表わす.
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|
極限値の定義は1変数関数のときと同じなので,たぶん連続性の定義も1変数関数のときと同じになると期待するでしょう.実際そのとうりです.
このように1変数関数における様々な定義はベクトル関数へと継承されます.
定義 2..3
ベクトル関数
は において,
が存在するとき で微分可能(differentiable)
であるという.また,この極限値
を点 における微分係数といい,
で表わす.
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|
次の節で学びますがベクトル
の方向は,
によって描かれる曲線の での接線方向になります.
ベクトルの和やスカラー倍がそれぞれの対応する成分の和やスカラー倍で定義されたように,ベクトル関数の極限値,微分係数,不定積分の計算は,ベクトル関数の成分の極限値,微分係数,不定積分より求めることができます.
証明
(a)
より,
ならば,
.また,
ならば,
ここで,平方根の中はすべて2乗の和であることに注意すると
となる.よって
より,
(b),(c),(d)の証明は
演習問題にまわします.
例題 2..2
のとき,
を求めてみましょう.
解
それぞれの成分を微分することにより
が について微分可能なベクトル関数ならば,次のことが成り立ちます.
例題 2..3
のとき,次のものを求めよ.
(1)
(2)
解
.
(1)
(2)
例題 2..4
ベクトル関数
の大きさ
が定数のとき,
と
は全ての において直交することを示してみましょう.
解
より,
.
よってベクトル関数の微分法より
したがって,内積が0より
と
は直交します.
任意のベクトル関数と定数,
定ベクトルについて次のことが成り立ちます.
例題 2..5
任意のベクトル関数
に関して,
を証明せよ.
解
.したがって,
.
問 2..1
を求めよ.ただし,
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