同次の定数係数の偏微分方程式の解法には,次の3つの解法がよく用いられます.まず
の形の偏微分方程式は,変数変換
を用いることによりの項を落とすことができるので,その解は常微分方程式
を解くことにより求めることができます.実際,
とおくと,
これより,
よって
例題 7..5
を解け.
解
とおくと
となる.これはについて1階線形なので積分因子
より,
を得る.ここで両辺をで積分すると,
よって
次の解法は変数分離法(method of separation of variables)とよばれるもので,の関数との関数の積の形の解を捜す方法です.
例題 7..6
Laplace方程式
を解け.
解
を
を用いて解く.
まず
より
となる.これを変数分離すると
ここで左辺はと独立で右辺はと独立.それが等しいということはともに同じ定数ということがいえる.この定数をとおくと
のとき
とおくと
のとき
とおくと
のとき
よってLaplace方程式が解をもつなら解は次のいずれかの形をとる.
を代入することによりとを分離できる微分方程式を変数分離形(separation of variables)といいます.
例題 7..7
次の境界値問題を解け.
解
よりさきほどの例題の結果が使えます.初期条件の形より3つの解の中から
を選びます.ここで
より
よってまたは.しかしなら
となるので
とおくと
ここで境界条件
を用いると
またはなら
となるので
よって
これより
初期条件
を用いるために両辺をで偏微分すると
初期条件
より
よって
.これよりここまでの条件を満たす解の列
を得る.
最後に初期条件
を満たすために,
その他のとおき,重ね合わせの原理を用いると
を用いると
の代わりに
が使えます.
次の例題が示すように,変数分離法は変数係数の偏微分方程式にも使えます.
例題 7..8
を解け.
解
を与えられた方程式に代入すると
変数分離すると
左辺と右辺はある定数に等しいはずなので,この定数をとおくと
最初の方程式はCauchy-Eulerの方程式でとおくことにより解が得られる.
のとき
とおくと
,
のとき
とおくと
,
のときは
となる.
2つめの方程式は
とおくと
,
とおくと
,
のときはとなる.
したがって,
の一次結合が解となる.
偏微分方程式のすべてが変数分離形になるわけではありません.たとえば
はそのひとつです.そこでそんなとき用いられるのがD'Alembert法とよばれる方法で,2階定数係数偏微分方程式
において,変数変換
とおくことにより,をと
の合成関数とし,との係数が0になるようにと
を選ぶことにより
を求めるという方法です.次の例題で詳しく示してみましょう.
例題 7..9
を解け.
解
とおくと
これより
同様にして,
これを元の微分方程式に代入すると
ここでを二次方程式
の異なる実数解とすると
.
これより
を得る.これを解くと
で積分すると
よって
例題 7..10
法を用いて波動方程式
の解で初期条件
と境界条件
を満たすものを求めよ.
解
とおくとは二次方程式
の解になるので
.よって
ここで初期条件を用いると
これより
.よって
,ただしはある定数.このを上の2つの式の最初のほうに代入すると
となる.これより
したがって
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