同次形微分方程式(Homogeneous differential equation)

しばしば適当な変換をとることによって,微分方程式は簡単な形に置き換えることができます.ここでは変換によって,変数分離形に置き換えれる微分方程式について考えます.形を覚えるのではなく変換の仕方について学ぶのがよいでしょう.

$\displaystyle y^{\prime} = f(\frac{y}{x}) $

で表わされる微分方程式を同次形(homogeneous)といいます.ここで

$\displaystyle v = \frac{y}{x} $

とおくとこの微分方程式は変数分離形になります.つまり,$y = vx$より $y^{\prime} = v^{\prime}x + v$となり,これを元の微分方程式に代入すると

$\displaystyle v^{\prime}x + v = f(v) $

を得ます.ここで変数を分離すると

$\displaystyle \frac{v^{\prime}}{f(v) - v} = \frac{1}{x} $

となり,確かに変数分離形です.この両辺を積分すると

$\displaystyle \int \frac{dv}{f(v) - v} = \log{x} + c $

となります.これに $v = \frac{y}{x}$を代入すると一般解を得ます.

与えられた微分方程式が同次形か見分けるには次のようにすると簡単です.
$M(tx,ty) = t^{n}M(x,y)$を満たす関数$M(x,y)$$n$次の同次関数(homogeneous function)といいます.この定義を用いると微分方程式

$\displaystyle M(x,y)dx + N(x,y)dy = 0,  y^{\prime} = -\frac{M(x,y)}{N(x,y)}$

において,$M(x,y)$$N(x,y)$が同じ次数の同次関数ならば,与えられた微分方程式は同次形です.

例題 1..7  

$y^{\prime} = \frac{x - y}{x + y}$を解け.

$M(x,y),N(x,y)$ともに一次の同次関数. 右辺の分子と分母を$x$で割ると

$\displaystyle y^{\prime} = \frac{1 - (y/x)}{1 + (y/x)} = f(\frac{y}{x}) $

であるから,同次形である.そこで上で説明したように$y = vx$とおくと,

$\displaystyle v^{\prime}x + v = \frac{1 - v}{1 + v} $

となる.これより

$\displaystyle v^{\prime}x = \frac{1 - v}{1 + v} - v = \frac{1 - v - v - v^{2}}{1 + v} $

または

$\displaystyle \frac{1 + v}{v^{2} + 2v - 1}v^{\prime} = -\frac{1}{x} $

を得る.両辺を積分して

$\displaystyle \frac{1}{2}\log{\vert v^{2} + 2v - 1\vert} = -\log{(cx)}, $

ただし,$c$は任意定数.よって

$\displaystyle (v^{2} + 2v - 1)x^{2} = c_{1}. $

ここで $c_{1} =1/c^{2}$より任意定数.最後に$v = y/x$に置き換えて整理すると,一般解は

$\displaystyle y^{2} + 2xy - x^{2} = c_{1}.
\ensuremath{ \blacksquare}
$

例題 1..8  

$y^{\prime} = \frac{x - y + 1}{x + y - 1}$を解け.

これは同次形ではないが,定数項が落ちれば同次形である.そこで次のようにして同次形に変形できる.2直線

$\displaystyle x - y + 1 = 0, x + y - 1 = 0 $

の交点を求めると$(0,1)$である.この点を原点とするように座標軸の平行移動

$\displaystyle x = X + 0, y = Y + 1$

を行なうと,

$\displaystyle \frac{dY}{dX} = \frac{dY}{dx}\frac{dx}{dX} = \frac{dy}{dx} = \frac{X - Y}{X + Y} $

となる.この微分方程式の一般解は例題1.3より

$\displaystyle Y^{2} + 2XY - X^{2} = c . $

よって与えられた微分方程式の一般解は

$\displaystyle (y - 1)^{2} + 2(y - 1)x - x^{2} = c $

となる. $ \blacksquare$

変換によって微分方程式を同次形に直すとき,与えられた微分方程式の形から何をどうおくか明らかなものもあります.

例題 1..9  

$y^{\prime} = \frac{x + y - 1}{x + y + 1}$を解け.

分母と分子に表われている$x + y$より,$u = x + y$と置く.すると$y = u - x$より $y^{\prime} = u^{\prime} - 1$. これを元の微分方程式に代入すると,

$\displaystyle u^{\prime} - 1 = \frac{u - 1}{u + 1}, $

$\displaystyle u^{\prime} = \frac{u - 1}{u + 1} + 1 = \frac{u - 1 + u + 1}{u + 1} = \frac{2u}{u + 1}, $

$\displaystyle \frac{u + 1}{u}du = 2dx. $

両辺を積分して

$\displaystyle u + \log{\vert u\vert} = 2x + c .$

よって一般解は

$\displaystyle y - x + \log{\vert x + y\vert} = c $

となる. $ \blacksquare$



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