領域で定義された関数
が内の点
で微分可能だとする.このとき,を一定に保ちながらを0に近づけると
同様に,を一定に保ちながらを0に近づけると
これより,
実部と虚部を比較すると,
という式を得る.この式をコーシー・リーマンの関係式(Cauchy-Riemann differential equation)という.
定理 3..4
領域で定義された関数
が内の点
で微分可能であるための必要十分条件は,
が点
で全微分可能で
が成り立つことである.このとき,
がその定義域のすべての点で微分可能なとき,はで正則(analytic)であるという.
平面全体
で正則な関数を整関数という.
注1. 点で正則というときは,だけでなくその近傍を含めて正則なことを意味する.
注2. が正則ならば,(微分可能であるから)連続である.
注 が連続な第2次偏導関数をもつことを仮定したが,正則関数は何回でも微分可能なことが別に証明されているから,この仮定はいらない.
定理 3..6
領域で
がCauchy-Riemannの方程式を満たし,かつ連続な偏導関数をもてば,
はで正則である.
注 定理3.4の十分条件を強くしたもので,正則性の判定に有効である.
例 3..1
では
が多項式で,その書く偏導関数も連続であり,
であるから,定理3.6よりは全平面で正則である.
例 3..2
では,
でと
とが等しくないから,Cauchy-Riemannの方程式(正則の必要条件)が成り立たない.よって,
は正則ではない.
例題 3..2
が正則で
なら,は定数であることを証明せよ.
解
が正則であるから定理3.4によって
仮定より
であるから,
.ゆえに
はいずれも定数.したがって,
も定数である.
解 (1)
より
.ゆえには調和関数.次に,
は正則であるからCauchy-Riemannの関係式から
を満たす.そこで最初の式をについて積分すると
を得る.ここではだけの関数である.これをあとの式に代入すると
.
よって
.これより
.したがって
(2)
より,
,
,
,
.これより,
.よって,は調和関数.次に,
は正則であるからCauchy-Riemannの関係式から
を満たす.そこで最初の式をについて積分すると
を得る.ここではだけの関数である.これをあとの式に代入すると
.
よって
.これより
.したがって
練習問題3.2
1. 次の関数を微分せよ.
- (a)
-
- (b)
-
- (c)
-
2. 次の関数を微分せよ.
- (a)
-
- (b)
-
- (c)
-
- (d)
-
- (e)
-
- (f)
-
- (g)
-
- (h)
-
- (i)
-
- (j)
-
3.
とするとき,次の関数の正則性を調べ,正則ならばその導関数を求めよ.
- (a)
-
- (b)
-
- (c)
-
- (d)
-