群の定義

定義 1..1   集合$A$の元$a$と集合$B$の元$b$の順序対$(a,b)$全体の集合を$A$$B$直積集合(direct product set)といい, $A \times B$で表す.たたし, $(a_{1}, b_{1}) = (a_{2}, b_{2}) \leftrightarrow a_{1} = a_{2} \wedge b_{1} = b_{2}$である.

例題 1..1   $A = \{1,2,3\}, B = \{2,3\}$の直積集合を求めよ.

$A \times B = \{(1,2),(1,3), (2,2), (2,3), (3,2), (3,3)\}$

定義 1..2   集合$A$の任意に元$a$に対して集合$B$の元$b$が唯1つ対応させる規則を写像(mapping)といい,

\begin{displaymath}\begin{array}{ll}
f : & A \longrightarrow B\\
& a \mapsto b ...
...)
\end{array}\ \mbox{または}\ A \stackrel{\small f}{\rightarrow} B\end{displaymath}

と表す.

例題 1..2   $\boldsymbol{Z}$を整数全体の集合, $\boldsymbol{Q}$を有理数全体の集合, $S = \{(m,n) : \boldsymbol{Z} \times \boldsymbol{Z}, n \neq 0\}$とする.このとき, $\pi : S \to \boldsymbol{Q}$ $\pi(m,n) = \frac{m}{n}$と定義すると,$\pi$は写像である.

$(m',n') = (m,n)$とすると,直積の定義より, $m' = m\ \hat\ n' = n$.よって, $\pi(m',n') = \frac{m'}{n'} = \frac{m}{n} = \pi(m,n)$となり,$\pi$は写像である.

定義 1..3   集合$G$の直積集合から$G$への写像を$G$2項演算(binary operation)という. $G \times G$の元$(a,b)$の写像による像を$a$$b$の積といい,記号$a \circ b$または$ab$で表す.また,このとき,集合$G$に1つの2項演算が与えられているといい,$(G,\circ)$と表す.

定義 1..4   $G$は空でない集合とする.$G$に2項演算が与えられていて,次の条件を満たすとき,$G$はこの演算に関して群(group)であるという.

(G1) 結合法則 $\forall a ,b, c \in G, (a \circ b) \circ c = a \circ (b \circ c)$
(G2) 単位元の存在 $\exists e \in G, \forall a \in G, a \circ e = e \circ a = a$
(G3) 逆元の存在 $\forall a \in G, \exists b \in G, a \circ b = b \circ a = e$

1..1   ${\mathcal Q}$に2項演算 $a \ast b = ab +1$が与えられている.このとき,2項演算$\ast$は結合法則を満たすか調べよ.

定義 1..5   $G$に属する任意の元$a,b \in G$に対して, $a \circ b = b \circ a$が成り立つとき,$G$を可換群,または,アーベル群という.

1..2   $a, b$を群$G$の元とする.$a$$b$が可換であるとき, $a \circ b^{-1} = b^{-1} \circ a$が成り立つことを示せ.

1..3   単位元の逆元は単位元であることを示せ.