幾何ベクトルについて次の3つのことはよく知っていると思います.(1)和,(2)スカラー倍,(3)内積(スカラー積).これまでに私たちは和およびスカラー倍の一般化を行いました.そこでここでは内積の一般化に挑戦します.
定義 6..1
2つのベクトル
に対して,実数
が定まり,次の性質をもつとき,
または
を
と
の内積(inner product)という.
あるベクトル空間のすべてのベクトル
とすべての実数
に対して,
|
定義 6..2
をの元とすると,内積は次の式で与えられる.
(注) これは内積の性質を満たしています.
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解
ベクトル空間上に内積が定義されると,ノルム(ベクトルの大きさ)が定義されます.
定義 6..3
ベクトルvのノルム(norm)は
で表わされ,次の式で与えられる.
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幾何ベクトル空間では, となるのでAの長さと同じです.三次元ベクトル空間では
ベクトル空間に内積が定義されると,ノルムだけでなく垂直という概念の一般化として直交を定義できます.
解 []で
関数空間での直交は直角に交わるということではありません.注意して下さい.
0でない幾何ベクトルAをその大きさで割り単位ベクトル を求めることがよくあります.もっと一般的な場合にも,ベクトルvをそのノルムで割り,単位ベクトル を作ります.このようにして大きさが1のベクトルを作ることを,正規化(normalize)するといいます.また直交系のすべてのベクトルを正規化してできた集合を正規直交系(orthonormal system)といいます.正規直交系の例として三次元ベクトル空間での{i,j,k}があげられます.
解
のとき,
ノルムはベクトル空間上の任意のベクトル と に対して,三角不等式
解