私たちがここまで扱ってきた常微分方程式は,求積法により解が得られるものばかりでした.そこで,ここでは求積法で解を得るのが困難な場合や近似解を得たいとき用いられる級数による解法(infinite series method)を学びます.この方法は無限級数を与えられた微分方程式の解と考え,無限級数の係数を決めていくという方法で,じつは微分方程式を解くうえでもっとも初歩的な方法かも知れません.ただ,しばしば起きることですが,無限級数の係数をすべて決めるのが困難なことがよくあります.そんなときは,最初の何項かが解の近似として用いられることがよくあります.
まずは整級数の性質に関する基本的な定理について考えてみましょう.
各項が関数であるような級数を関数項級数(series of functions)といいます.
を区間
で定義された関数の列とします.この関数列
より
を考えます.区間
のすべての点
で数列
が収束するとき,つまり
であるような関数
が存在するとき,級数
は収束するといい,
を無限級数の和とよびます.とくに収束が区間
において一様収束である場合,つまり,区間
の任意の
に対して

ならば
となる
が区間
の
に無関係に存在する場合,級数
は区間
で一様収束する(uniformly convergent)といいます.
ここで
とおくと,無限級数の一様収束は次のように表わせます.つまり区間
の任意の
に対して

ならば
となる
が存在します.
定理 4..1 (Weierstrassの判定法) ある区間  の任意の  に対して
であるような実数列  が存在するとき,
 は区間  で一様収束かつ絶対収束である.
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証明
ところで
より,どんな
に対しても
が存在し,
ならば
ここで
は明らかに
とは無関係なので,
のとき
が成り立つ.
無限級数が一様収束するとき,級数は有限級数のもっている多くの性質を継承します.
定理 4..2 (無限級数の連続性)  が区間  で連続で
 が区間  で一様収束ならば,
 も区間  で連続である.
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定理 4..3 (項別積分の定理)  が区間  で連続で
 が  で一様収束ならば,
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定理 4..4 (項別微分の定理)  が区間  で  -級で,
 が一様収束するならば
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無限級数
において,とくに
のときを整級数(power series)といいます.たとえば
のTaylor級数
は整級数のひとつです.
さて
は
のどんな値に対して収束するのでしょうか.
とおき,D'Alembertの判定法を用いると
ここで
ならば
は収束し,
ならば
は発散するのでこの極限値
を収束半径(radius of convergence)といいます.
例題 4..1
次の整級数の収束半径を求めよ.
解
次に整級数の基本性質をあげておきます.
定理 4..5 (整級数の基本性質)
 の収束半径を  とし,
 とおくと,次の  から  が成り立つ.
 任意の
 に対し,
 は  で一様収束する.
 は
 で
 級である.
 は
 で連続である.
 は
 で項別微分可能であって,次の式が成り立つ.
 は
 で項別積分可能であって,次の式が成り立つ.
 において  のTaylor級数は整級数
 である.つまり
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関数
が正の収束半径をもつ整級数
で表わされるとき,
は点
で解析的(analytic)であるといいます.また,開区間
の各点で解析的な関数は区間
で解析的であるといいます.
Subsections