完全微分形ではない全微分方程式
に,適当な関数
をかけて得られる方程式
が完全微分形になるとき,をこの微分方程式の積分因子(integrating factor)といいます.
一般に,積分因子はひとつとは限りません.たとえば,関数とは次の微分方程式の積分因子です(本当か確認して).
ではどうやって積分因子を見つけることができるか考えてみましょう.
が完全微分形だとすると
を満たすはずです.これを書き直すと
となります.残念ながら一般にこの方程式を解くのは困難です.そこでここでは特殊な場合に限って話を進めます.
I.
のとき
より
ここで
がだけの関数なら積分因子は
II.
のとき
より
ここで
がだけの関数なら積分因子は
となります.積分因子をひとつだけ捜していたので積分定数は無視しました.
例題 1..15
を解け.
解
よりこの全微分方程式は完全微分形ではない.
そこで
を計算すると
これはだけの関数なのでI.より積分因子は
である.これを元の式にかけると
この式は完全微分形なので一般解をくくり直し法で求めると
より一般解は
で与えられる.
例題 1..16
を解け.
解
より完全微分形ではない.また
より
ともにだけだけの関数ではない.そこで別な方法で積分因子を見つけてみる.とをよく見ると似た形をしている.そこで積分因子は
の形をしていると考えてみる.
が積分因子なら
は完全微分形のはずなので
を得る.
この2つの式を比較して,
を得る.この連立方程式を解くと,
となるので,
は完全微分形となり,一般解は
である.
Subsections